与えると損になる?見返りを求める人が幸せになれない理由。与えると自分が貧しくなると考えるのは「非生産的」な性格
文部科学省が発表した「21世紀出生児縦断調査(平成13年出生児)」によると、約6割が1ヵ月間で1冊も本を読まないそう。「自分の人生で経験できることには限りがあり、読書によって他者の人生を追体験することから学べることは多い」と語るのは、哲学者の岸見一郎先生。今回は、岸見先生が古今東西の本と珠玉の言葉を紹介します。岸見先生いわく、「与えると損になると思う人がいる」そうで――。 【書影】古今東西の本と珠玉の言葉を一挙に紹介。岸見一郎『悩める時の百冊百話-人生を救うあのセリフ、この思索』 * * * * * * * ◆与えることでつながる それで おまえは、 いちばん きれいな さかなでは なくなるが、 どう すれば しあわせに なれるかが わかるだろう。 (マーカス・フィスター『にじいろの さかな』谷川俊太郎訳) マーカス・フィスター『にじいろの さかな』は、青く深い遠くの海に住む「にじうお」と呼ばれる魚の話である。 にじうおは虹のように様々な色合いのウロコをつけていた。その中のキラキラ輝く銀のウロコを見た魚は1枚おくれというが、にじうおは断った。 〈ぼくの この とくべつな うろこを くれだって? いったい だれさまの つもりなんだ?〉 (前掲書) この話が広まると、誰一人にじうおに関わろうとしなくなった。にじうおがくると、皆そっぽを向いた。にじうおは海中で一番寂しい魚になってしまった。 目も眩むような輝くウロコを持っていても、誰にもほめてもらえなければ何の役に立つというのか。困惑したにじうおはたこに相談した。 たこはウロコを1枚ずつ他の魚に与えるよう助言した。 〈それで おまえは、 いちばん きれいな さかなでは なくなるが、 どう すれば しあわせに なれるかが わかるだろう〉 輝くウロコがなくなったら、どうやって幸せになれるのか。にじうおは困惑したが、小さなウロコを1枚だけほしいといわれた時、小さな魚に与えた。すると、にじうおは不思議な気持ちに襲われた。 そして、その後も次々にウロコを分け与えた。「あげれば あげるほど、うれしく なった」(前掲書)のである。ついに、輝くウロコは1枚になったが、にじうおは幸せだった。