見た目も性格もバラバラな者たちが「詐欺」のために団結する…「なりすまし事件」を起こし続ける「地面師集団」とは
Netflixドラマで話題に火が点き、もはや国民的関心事となっている「地面師」。あの人気番組「金スマ(金曜日のスマイルたちへ)」や「アンビリ(奇跡体験!アンビリバボー)」でも地面師特集が放映され、講談社文庫『地面師』の著者である森功氏がゲスト出演した。同書はすべて事実を書いたノンフィクションであり、ネトフリドラマの主要な参考文献となっている。 【漫画】「しすぎたらバカになるぞ」…性的虐待を受けた女性の「すべてが壊れた日」 不動産のプロですらコロッと騙されるのだから、私たち一般人が地面師に目をつけられたらひとたまりもない。そのリスクを回避するためには、フィクションであるドラマよりも、地面師の実際の手口が詳細に書かれた森氏のノンフィクションを読むほうが参考になるだろう。 地面師たちはどうやって不動産を騙し取るのか。森功著『地面師』より、抜粋してお届けしよう。 『地面師』連載第70回 『架空受注を隠蔽するために「闇取引」に手を染める…積水ハウスの地面師被害に隠された「負のスパイラル」』より続く
地面師のネットワークは健在
かつて大物と呼ばれた地面師たちのなかには、不動産詐欺から手を引いた者もいる。地面師業界においても、いわば多少の代替わりがあるようだが、そのネットワークはまだまだ健在だといえる。 電通ワークス事件が起きた07年から12年と同じ時期にあたる09年、世田谷区成城にある100坪超の住宅地で地面師事件が起きた。新橋を根城にする不動産ブローカーグループが85歳の地主になりすまし、土地を担保に1億2000万円の小切手を詐取したという事件だ。警視庁捜査2課が逮捕した顔ぶれが、野口勝男や滝沢雅弘のほか、八重森和夫、染谷俊之、笹井文男、渡辺克己、石井充孝、番野秀雄の8人だった。 「自分が地面師たちと初めて知り合ったのは、この成城の事件の頃でした。自分は、06年くらいから父親の土地を使って金をつくろうとしていて、不動産関係の知人に声をかけていました。一年ぐらい経つと、業界ではその話がかなり広がっていました。自分の案件を持ち回っているブローカーがいましてね。『親父の土地で金策したがっているポン中の息子がいるけど、いい知恵はないか』と逆に自分に話を持ち込んでくるわけです。山手線を一周し、話がもとの自分のところに戻ってくるようなもんでしょうか。そんなとき染谷と八重森が、『俺たちに任せてくれないか』とやって来たのです」 そう笑いながら語る首都圏在住の資産家の息子、逗子与志之(仮名)に出会った。逗子は自身のことを自分と呼んだ。裕福な家庭に育ったが、若くして道を外し、いったん暴力団組織に身を置いたという。「ポン中」とは覚醒剤などの薬物中毒者のことを指すが、当人は薬物中毒などではないという。組から抜けると、闇金融業などで荒稼ぎし、それなりの暮らしをしてきたそうだ。