フォーミュラE、バッテリー開発の自由化はいつか? ドッズCEO「F1のように、ひとりのドライバーが年間19勝もするような状態は避けたい」
フォーミュラEマシンは、バッテリーがワンメイクであるため、自動車メーカーとしては参入しても旨みがないという声が聞かれることもある。しかしフォーミュラEオペレーションズのジェフ・ドッズCEOは、バッテリーの開発を自由化すると参戦コストが急激に上がってしまうため、慎重に判断しなければいけないと語った。 【ギャラリー】美しく個性的なマシン”粒ぞろい”だった1992年のF1 2014年に始まったフォーミュラEは、2年目のシーズンからパワートレインについては各メーカーが独自に開発できることになった。しかしその一方で、シャシーや空力パーツは独自に開発することが許されない、いわゆるワンメイクである。それはエネルギーを蓄えるバッテリーも同様で、現在のGen3マシンには、ウイリアムズ・アドバンスド・テクノロジー製のバッテリーが使われている。 また、2026-2027シーズンから導入される予定のGen4マシンでも、バッテリーの開発は解禁されない予定だ。 フォーミュラEはシリーズの立ち上げ当初から、参戦コストを抑えることに注力してきた。そのため、マシンの大部分をワンメイク化しているわけだが、レースを走る実験室として使いたい自動車メーカーにとっては、物足りない部分もある模様。その際たる例がバッテリーで、たとえばホンダは、バッテリーの開発が自由化されれば、参戦を検討する可能性があると発言していたこともある。 ではバッテリーが自由化されるのかいつか? そう尋ねると、ドッズCEOは次のように語った。 「Gen4マシンではバッテリーの容量が大きくなるし、航続距離も伸びることになる。短いレースなら、出力を上げることもできる」 「我々はふたつの理由で、バッテリーを自由化していない。ひとつは、競争の激しいレースにするためだ。バッテリーは重要なパーツであるため、パフォーマンスを大きく左右することになる。F1では昨年、ひとりのドライバー(マックス・フェルスタッペン/レッドブル)が19勝も挙げてしまった……そうならないようにしている。我々は競争の激しいレースにすることを目指しているのだ」 「もうひとつの面はコストだ。我々はメーカーやチームにかかるコストを、急激に上げたくないのだ」 「そういう理由で、Gen4ではバッテリーを自由化することがないが、その後のGen5については、コストの面と競争という面とのバランスをとりながら、どうするか検討していくということになると思う」 フォーミュラEを走る実験室とするならば、市販車に転用できる技術開発の場としなければいけない。そういう意味では、バッテリーというのは重要な要素となるはずだ。フォーミュラEで小型軽量、高出力高効率のバッテリーを作り出すことができれば、その技術を市販車に転用できるという意味でも、自動車メーカーにとっては参戦する意義が再び高まる一助となろう。 しかしドッズCEOは、現状のフォーミュラEでも自動車メーカーの市販車開発に貢献できていると断言する。 「いずれ、コストとそのメリットという観点で、バッテリー開発の自由化を考える時が来ると思う。しかし、今開発が許されている部分でも、市販車開発に貢献していると思う」 「先ほども申し上げた通り、Gen4でもバッテリーを自由化するつもりはないし、Gen3もまだ3年残っている。つまり少なくともあと7年は、バッテリーの開発を自由化することはない」
田中健一
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