【ライブレポート】RYUTist「ありがとね、ほんとにね。」3人の卒業公演で見せた集大成、感謝の思いを込め“笑顔でサヨナラ”
RYUTistのワンマンライブ「RYUTist LAST HOME LIVE ありがとね、ほんとにね。」が12月1日に東京・渋谷CLUB QUATTROで開催された。この公演もって五十嵐夢羽、宇野友恵、横山実郁のメンバー全員が卒業。グループ活動は無期限休止となった。 【画像】RYUTist。左から五十嵐夢羽、横山実郁、宇野友恵。(他110件) ■ 新潟の地で常に進化を続けてきたRYUTist RYUTistは2011年に結成され、新潟市中央区古町を拠点に全国でライブ活動を行ってきたアイドルグループ。RYUTistというグループ名は新潟市を表す「柳都(りゅうと)」という言葉と「アーティスト」を掛け合わせたもので、「新潟のアーティスト」という意味が込められている。真摯かつストイックな姿勢で臨んできたライブパフォーマンス、多彩なアーティストから提供を受け、綿密かつ丁寧に作り込まれたポップソングの数々、メンバーの穏やかで素朴なキャラクター……この13年間、彼女たちは新潟の地から唯一無二の魅力を放ち、常に進化を続けてきた。決して活動の規模は大きく派手なものではなかったが、日本全国に数多くのローカルアイドルが存在する中、誰も模倣できない道を歩んできたのがRYUTistだ。 2023年春から現在の3人体制で活動してきた彼女たちだが、メンバー個人での活動の幅も広がり、それぞれが今後の人生について考え始める中で話し合いを重ねた結果、メンバー全員卒業という決断に至った。今年9月に報じられたこのニュースは多くのアイドルファンや音楽リスナーに驚きを与えたが、メンバーはこれまでグループを支えてくれたファンと“笑顔でサヨナラ”すべく、卒業までの3カ月間を“ありがとねほんとにねSEASON”と名付けてそれまで以上に精力的に活動を展開。宮城、新潟、大阪を回るツアーや楽曲提供アーティストとのツーマン、メンバーのプロデュース公演など多くのライブを重ね、感謝の思いを込めた歌声を一途にファンへ届けてきた。そしてその終着点である卒業公演の舞台となったのが、結成8周年ライブが開催された思い出の場所・渋谷CLUB QUATTRO。チケットが完売し超満員となった会場で大勢の観客が見守る中、3人がステージで見せたのは13年をかけてたどり着いたRYUTistというアイドルグループの到達点と集大成、そして幸せに満ちたパフォーマンスだった。 ■ ライブの幕開けを飾ったのは ロビーに過去衣装が展示され、フロア頭上に多数のフラッグが飾られるなど、3人の歩みを振り返りつつ旅立ちを祝う特別なムードが開演前の会場に漂う。このフラッグは本公演のキービジュアルを手がけるなどRYUTistと縁の深いマンガ家・ナカGがデザインしたもので、「卒業公演をメンバーフラッグでいっぱいに!プロジェクト」に申し込んだファンの名前がRYUTistメンバーによる直筆で書かれた。活動休止前ラストライブという大きな意味を持つ公演ながら、RYUTistらしい温かな空気が会場に充満していた。そしていよいよ開演時刻を迎えると、初期から使われてきたおなじみの出囃子「RYUTiswing」の新録バージョン「RYUTiswing LAST LIVE」が軽快に鳴り響き、フロアでクラップが発生する。そしてこのライブのために用意された純白の衣装に身を包み、ステージに姿を見せたRYUTistが1曲目に披露したのはデビュー曲「RYUTist! ~新しいHOME~」。グループの始まりの曲を晴れやかに歌うメンバーと息をそろえてコールを叫ぶファンの気持ちが重なり、開演早々に会場が一体感で包まれた。 さらに清涼感あふれるポップチューン「日曜日のサマートレイン」、今年リリースされたばかりの楽曲ながら盛大なコールが入るライブ鉄板曲へと成長した「WOOT!」、デビュー8周年のタイミングで制作された恋愛ソング「Majimeに恋して」と続き、はつらつとした高揚感があふれていく。MCに入るとメンバーは「ついにって感じするねー」「でもまだ実感が湧いてない」といつもの調子でトーク。いい意味で緊張感のない3人の姿にフロアのファンもにこやかな表情を浮かべていた。次のブロックでは昨年4月にグループを卒業した佐藤乃々子を含む4人体制最後の楽曲「ターミナル」や、グループの代表曲と言える柴田聡子の提供ナンバー「ナイスポーズ」が披露され、RYUTistの楽曲がいかに粒ぞろいで、いかにポップセンスにあふれているかを観客に改めて実感させるようなセットリストとなった。 ■ 「春⾵烈歌」で巻き起こった盛大なシンガロング 続いてRYUTistはこれまでに担当してきたCMソングをメドレー形式で披露。グループの歴史を総括するようなライブ構成、普段の公演では聴く機会の少ないレアなナンバーを詰め込んだ選曲でファンを喜ばせつつ、新潟県民にはおなじみの楽曲の数々で地元への愛と感謝の気持ちを表明した。このメドレーを含めるとすでに15曲を披露しているRYUTistだが、「みんなお腹いっぱいかもしれないけど、まだまだだからね」「今日は長いからね」と観客の期待を煽ると、「青空シグナル」「センシティブサイン」「黄昏のダイアリー」を駆け抜けるようにして連続でパフォーマンス。歌とダンスで場内に清爽な空気を生み出したかと思えば、昨年発表の最新アルバム「(エン)」より「PASSPort」「水硝子」も披露し、繊細な歌声、静と動の緩急が効いた振付で観客の視線を釘付けにした。 五十嵐が自身と同じくRYUTistのオリジナルメンバーである宇野に向かって「(最後まで活動を続けるのが)この2人になるとは思わなかったね」と笑いながら語るなど、MCに入るたびに和やかなムードが流れるが、横山の「私たちは卒業してしまいますが、RYUTistの楽曲はいつでもみんなのそばにあります」という言葉で場内に緊張感とセンチメンタルな空気が生まれる。横山が「月日が流れて季節が巡って、私たちが大人になってまたいつか出会えるその日まで今日という日を忘れないように、今日という日が消えないように皆さんがずっとこの曲を聴いてくれたらいいなと思います」と言葉を紡いだのち、3人は「春にゆびきり」を歌唱。曲前の横山の語りとリンクする「いつか僕らがまた出会うその日に 消えないよう 忘れないよう ほら ゆびきりしよう」という歌詞が観客の胸にじんわりと染み渡った。 さらに数々のライブを温かく彩ってきた「⼝笛吹いて」が響き渡ると、次第に会場全体に得も言われぬ情感が広がっていく。そこから「Blue」「神話」と流れるように楽曲が畳みかけられ、観客は幻想的に歌い踊る3人の一挙一動を目に焼き付けるべく、ステージ上の光景を息を凝らして見つめる。続いて披露された曽我部恵一の提供曲「春⾵烈歌」では、横山の「クアトロ歌えー!」という叫びに呼応して盛大なシンガロングが巻き起こり、その声を浴びたメンバーは思わず目から涙をあふれさせた。 ■ 3人が語るメンバーとファンへの感謝の思い ここで3人は順番に挨拶の言葉を述べる。2016年にグループに加入した横山は瞳に涙をたたえながら「RYUTistが私のすべてだと言えるくらい、今日この日まで全力で駆け抜けてきました。RYUTistとして活動していく中でみんなからかけてもらった言葉だったり、みんなと一緒に過ごした思い出だったり、大切なものがどんどん増えていって。何1つ取りこぼさないように必死に抱えながらここまでRYUTistとして活動してきました。今思い返すと、どれも宝物のような日々でした」と話し始め、「RYUTistに永遠はないと思っていたから、いつ終わる日が来ても後悔しないように、言い訳をしないように常にRYUTistと向き合ってきました」「ただ、RYUTistを愛したことやみんなを大切に思った気持ちは終わることはありません」とフロアをまっすぐに見据えた。 さらに横山は「みんなの人生という素敵な物語の中にRYUTistの横山実郁を登場させてくれて本当にありがとう。そして横山実郁の人生の物語の中に登場してくれて、私の大切な一部となってくれて本当にありがとうございます」とファンへの愛を言葉に。ステージ上の五十嵐と宇野のほうを向くと、「私、自信がないんですよ、自分に。私ってRYUTistに本当に必要なのかなってすぐ考えちゃうんです。そういうときにメンバーはいつも『がんばって』じゃなくて、『無理しなくていいよ』じゃなくて、心から信用のできる『大丈夫』をいっぱい言ってくれました」と感謝の思いを伝えた。 五十嵐は「私はアイドルになりたいという夢があって、RYUTistのオーディションを受けました。小学5年生からこの活動を始めて、人生の半分以上の時間をRYUTistで過ごしてきました。青春と呼べるものが私にはRYUTistしかなかったし、RYUTistに全力で注いできた13年間でした」とこれまでの道のりを回顧。「皆さん1人ひとりが持つパワーってすごくて。いっぱいの中のたった1人と思うかもしれないけど、私にとっては皆さんがオンリーワンというか、“私とあなた”と思っているから、1人ひとりが存在することにすごく意味があって。かけてくださった言葉とか、むうたんって呼んでくれたことはずっと覚えてるんですね。アイドルになりたくてアイドルになったけど、つらいこともたくさんあって。ここまで続けてこれたのは皆さんの言葉があったからだなと思います。1人じゃ絶対に来れなかった場所で、立てなかったステージです」と彼女なりの言葉でファンへの感謝の気持ちを口にし、「私、五十嵐夢羽のアイドル人生に悔いなしです!」と晴れ晴れとした表情で言い切った。 宇野は「わたくしごとにはなりますが……」と切り出すと、「この13年、グループでのライブ出演、皆勤賞を達成しました!」と満面の笑みで報告。大きな拍手を浴びたのち、「皆さんに会えるライブの時間が本当に大好きでした。人とつながること、人の温かさがRYUTistで一番学んだことだと思っています。私は最初、人と関わることが苦手だったんですけど、そんな自分も少しずつ変化していって、RYUTistの音楽や大好きな新潟の街を通してたくさんの方に出会えたこと……RYUTistが本当に楽しくて、かけがえない特別な日常でした」と感慨深い様子で自身のアイドル人生を振り返る。続いて宇野は五十嵐と横山と目を合わせながら「2人がいてくれたから、RYUTistでいられる喜びをこんなにも感じられています」「明日からはお友達として、これからもお姉ちゃんとして仲よくさせていただけたらうれしいです。夜中でも朝早くでも連絡くれたらすぐに出るので、遠慮せず、何か話したいことがあったら連絡してください」と語りかけ、再びフロアのほうを向くと「疲れてても迷っていてもステージに立って皆さんの顔を見たら、いつも元気になれて、本当に楽しくて。大好きだなといつも思っています。本当に、ありがともちー!」と笑顔をはじけさせた。 それぞれが胸の内を話し終えたあと、3人が歌唱したのは「RYUTist HOME LIVE」のラストを数え切れないほど飾ってきた初期曲「ラリリレル」。メンバーの柔らかな歌声とファンの声援がステージとフロアを行き交い、両者の絆の強さが改めて示された。 ■ 最後の挨拶はお決まりのあの言葉 ファンによる気持ちのこもったアンコールの声に導かれるように、再びステージに登場したRYUTistは、ファンからのサプライズ演出によりフロア一面が白のペンライトの光で染まっていることに驚き、喜びの笑顔を浮かべる。3人は「これ以上泣かせないで!」とリアクションすると、今度はメンバーのほうからサプライズで“お知らせ”を発表。CD、12inchアナログ、Blu-rayの3枚がセットになった作品「RYUTist 2023-2024」がタワーレコード オンライン限定で受注販売されることを告知した。CDと12inchアナログには2023年に3人体制になって以降にリリースされた楽曲と、柴田聡子、君島大空、石若駿が手がけた新曲が、Blu-rayには「RYUTist LAST HOME LIVE ありがとね、ほんとにね。」の模様が収録される。活動休止後に新曲を3曲もリリースするという、楽曲制作にひたむきに臨んできたRYUTistらしい展開にフロアから拍手と歓声が沸き起こった。「卒業しても尖ったことをやってく(笑)」と楽曲の内容について期待を煽ったメンバーは、その新曲の中から柴田の提供曲「Unknown Us」をこの場で初披露。「Unknown Us」は歌詞に3人の思い出を詰め込んだ卒業ソングとのことだが、曲調はセンチメンタルなものではなく、跳ねるようなリズムと朗らかなメロディが心地よいファンクテイストで、ここにもRYUTistらしい一面が表れていた。 その後、ファンから送られた花束を抱え、フロアをバックに記念撮影をしたRYUTistは初期から歌い続けてきた「Beat Goes On!~約束の場所~」を歌唱。会場全体が心地よい一体感で覆い尽くされる中、観客に向けて深くお辞儀をしてステージをあとにした。 しかし「LAST HOME LIVE」はここで終わらず、再びアンコールを求める声がフロアのあちこちから発生する。改めてステージに姿を見せたRYUTistが活動の締めくくりとなるラストナンバーとして歌ったのは、この日2度目の「ラリリレル」だ。ライブタイトルに引用された「ありがとね、ほんとにね」というフレーズに始まり、「寂しんだ ほんとはね だけど笑顔で サヨナラ」などの1つひとつの歌詞がこの瞬間、状況に重なり、これまで以上に特別な意味を帯びて響いたが、メンバーもファンも晴れやかな笑顔を見せて歌声とコールを浴びせ合った。そしてとうとう最後の曲のパフォーマンスが終わると、3人は声をそろえて「ラリリレル! バハハーイ!」というお決まりの“秘密の言葉”を叫ぶ。13年にわたって実直にアイドル活動に励み、新潟から全国へ音楽の喜びを届け続けたRYUTist。その軌跡はメンバーの笑顔とともに大勢の人の心に刻まれた。 ■ セットリスト □ 「RYUTist LAST HOME LIVE ありがとね、ほんとにね。」2024年12月1日 渋谷CLUB QUATTRO SE. RYUTiswing LAST LIVE 01. RYUTist! ~新しいHOME~ 02. 日曜日のサマートレイン 03. WOOT! 04. Majimeに恋して 05. きっと、はじまりの季節 06. ターミナル 07. ナイスポーズ 08. ALIVE 09. CMソングメドレー(カラフル・ミルク~ミラクル・ミルク~パワフル・ミルク~ミルクデイ~Groovy Drive~未来はプリズム~フレ!フレ!フレ!) 10. 青空シグナル 11. センシティブサイン 12. 黄昏のダイアリー 13. echo 14. PASSPort 15. 水硝子 16. 春にゆびきり 17. ⼝笛吹いて 18. Blue 19. 神話 20. 春⾵烈歌 21. ラリリレル <アンコール> 22. Unknown Us 23. Beat Goes On!~約束の場所~ <ダブルアンコール> 24. ラリリレル