「米国政府はボタンを押すだけで、我々を潰せる」テザー社CEO
キャンターとテザー
米当局が米国を拠点とするキャンターに保有されている準備資産を通じてテザー社に影響力を及ぼす可能性について質問されたアルドイノ氏は「キャンターは隠れることはできない」と述べた。 「どこで米国債を保有しても、米国債は実際には最終的にFRB(米連邦準備制度理事会)の口座にある。私がキャンターと安心して取引できるのは、我々がOFACを尊重しているからだ」 OFAC(Office of Foreign Assets Control)は、米財務省傘下の組織で、テロリストや麻薬密売人をはじめとする個人や国に対する制裁措置の実施を担当している。 アルドイノ氏は、不正な資金調達におけるUSDTの役割については、米ドルが使われていることと比較して「大海の一滴」に過ぎないと答えた。 「誰も完璧ではないが、銀行が麻薬関連の取引で支払った罰金を見てほしい」と同氏は述べた。例えば、TD銀行は今月、麻薬カルテルによるマネーロンダリングを適切に監視できなかったとして、30億ドル(4500億円)以上の罰金を支払うことに合意した。 アルドイノ氏は、テザー社は暗号資産ウォレットの凍結とブラックリスト化に積極的に取り組んでおり、世界中の180の政府当局と協力していると述べた。 「我々のメッセージはきわめて明確だ。USDTや暗号資産を犯罪に使うことは、どうしようもないくらい愚かなことだ」
選挙の影響
米大統領選が規制やテザー社に及ぼす影響についてアルドイノCEOは、どちらが勝っても、暗号資産やステーブルコインの可能性を理解してくれると期待していると述べた。 「ステーブルコインについては、理解しやすいだろう。中国が米国債を売却しており、我々は今、米国債を購入している。政府と規制当局は『素晴らしいことだ』という結論に達しただろう」 テザー社の米国債保有高は、ドイツを上回り、世界トップ20にランクインしている。 キャンターフィッツジェラルドとハワード・ルトニックCEOの政治的役割については、彼らとの仕事は、時価総額が100億ドル規模の頃には小規模な銀行と取引していたをテザー社が、米国債を保有するために「アイビーリーグのカストディアン」との取引を必要とする大規模な事業へと成長するまでの4年間の道のりの一部だったと述べた。 「齟齬が生まれたのは、ハワードが公の場で、キャンターはテザー社に対してデューデリジェンスを行ったことを明言し、皆に『我々は彼らの資金を保有している』と伝えたことだ」 「我々は誰からも政治的な便宜を期待していない」とアルドイノCEOは述べた。テザー社は金融包摂(ファイナンシャル・インクルージョン)の推進に多大な取り組みを行っており、「民主党は誰よりも金融包摂の必要性を理解しているはずだ」と語った。 一方、テザー社は米国債の大口購入者であり、これは米ドルの覇権維持に関心を持つ共和党にとって説得力があるはずだ。 「我々が構築しているものは両党にとって理にかなっている」とアルドイノCEOは結論づけた。 「いずれにしても、(米国の規制は)ポジティブなものになるだろう」 |翻訳・編集:CoinDesk JAPAN編集部|画像:テザー社のパオロ・アルドイノCEO(Tether)|原文:Tether's Paolo Ardoino: 'If the U.S. Government Wanted to Kill Us, They Can Press a Button'
CoinDesk Japan 編集部