“介護保険”施行から24年「改悪が続いた」 介護現場の処遇改善訴える集会が開催
介護現場の処遇改善などを訴える集会が10月6日、東京・湯島で開催された。 集会は中央社会保障推進協議会(中央社保協)、全日本民主医療機関連合会(全日本民医連)、全国労働組合総連合(全労連)など複数の労働組合や団体で構成された「全国介護学習交流集会実行委員会」が主催したもので、当日はオンラインを含め350人以上の参加者(主催者発表)が集まった。 政府は2024年度の介護報酬改定で、介護業界全体で1.59%の報酬引き上げを実施。しかし、訪問介護の分野では、基礎報酬を2~3%程度引き下げる対応がとられたため、集会では訪問介護についての言及が相次いだ。
「約10年間介護を受けるのに、こんな制度のままでは…」
集会ではまず、『あなたはどこで死にたいですか?』(岩波書店)などの著作で知られる、非営利法人 暮らしネット・えん代表理事の小島美里さんによる記念講演が行われた。 小島さんは講演の中で、施行から24年が経った介護保険制度について「改悪が続いた」と批判。以下のように語った。 「介護を必要とする人に対して、初期から終末まで対応可能なのが訪問介護ですが、その現場では年老いたヘルパーが、老人を介護しているなど多くの問題があります。そして介護保険制度の改訂によって、訪問介護の報酬引き下げが行われたり、生活援助の時間が削られてきました。その結果、時間内に洗濯物を回して干すことすら難しくなりました。 この20数年間の間に、平均寿命と健康寿命の両方が延びましたが、平均寿命から健康寿命を引いた時間は約10年のまま平行に推移し、差が縮まっていません。そして、この約10年こそ、介護を必要とする時間です。 この約10年間を自分らしく過ごすためにも、『こんな介護保険制度のままではダメだ』と一緒に国に訴えていきましょう」
介護保険制度の抜本的な見直し、報酬引き下げ撤回など要求
集会ではほかにも、介護現場で働く人や、各地の労働組合に加入して活動する人たちによる報告・意見交換が行われ、「介護は本来、国が責任を持つべきなのに、営利企業に任せすぎている。公共のものに戻していく必要があるのでは」といった意見があがった。 その後、集会では国に対し、下記の4点を求めるアピールを採択。 ①社会補償費を大幅に増やし、誰に対しても必要な時に必要な介護が保障されるよう、(利用者の)費用負担の軽減、サービスの拡充など介護保険制度の抜本的な見直しを行うこと。介護保険財政に対する国庫負担の割合を大幅に引き上げること ②訪問介護の基本報酬の引き下げを撤回し、介護報酬全体の大幅な底上げを図る再改定を至急行うこと。その際はサービスの利用に支障が生じない様、利用者負担の軽減などの対策を講じること ③利用者料2割負担の対象者の拡大、ケアプランの有料化、要介護1~2の保険給付はずし(総合事業への移行)など、介護保険の利用に重大な困難をもたらす新たな制度見直しを検討しないこと ④全額国庫負担により、すべての介護従事者の賃金を全産業平均まで早急に引き上げること。介護従事者を大幅に増やし、一人夜勤の解消、人員配置基準の引き上げを行うこと アピール案を読み上げた東京医労連の松﨑美和書記次長は「介護する人、受ける人がともに大切にされるよう、介護保険制度を変えていく必要がある」と訴えた。
「マイナと訪問介護報酬、政府にとってはアキレス腱」
集会の最後には、民医連の林泰則事務局次長が衆院選やその後の国会議論を念頭に今後の活動について、以下のように語った。 「社会保障の分野では、医療現場はマイナ保険証、介護現場は訪問介護の報酬引き上げが今一番の争点となっています。この2点は政府にとってもアキレス腱のようになっているのではないでしょうか。 新しい衆議院議員が選出されれば、衆議院厚生労働委員会のメンバーも替わります。そこで、介護報酬の引き上げなどを訴える請願署名を集め、新しい国会に提出し、処遇改善を成功させたいと考えています」(林泰則事務局次長)
弁護士JP編集部