自己プロデュースの天才・高橋ヒロムが描く内藤哲也戦後の未来「LIJを離れるか?とか言われてますが…」
【「ききみみ 音楽ハンター」特別編/FM802×新日本プロレス(5)】業界のトップを走る両者のコラボについて掘り下げた今回の特集。最終回は新日本プロレス・高橋ヒロム(35)がFM802DJとしての野望とともに、本業での葛藤と未来について興味深い話を展開する。新日本の年間最大興行「WRESTLE KINGDOM」(1月4日、東京ドーム)を前にどうしても伝えたく、音楽コラムというより“ほぼプロレスコラム”となることをお許しください。(萩原 可奈) 高橋ヒロムは自己プロデュースの天才だと思う。長所や短所も含め自分を熟知し、魅せ方を熟考しているように感じる。リング上での発言や振る舞いはもちろん、長期欠場中に一切姿を見せずファンの渇望を増幅させたり、個人のYouTubeチャンネルやファンクラブを新日本の現役選手として最初に始めるなど、その戦略やアイデアには舌を巻く。 取材がかなえば聞きたいことがあった。先々までレスラーとしての自分を描いているのか、その時々でプロデュースしていくのか。「その時々にはなりますね…対戦相手も変わってくるので相手に合わせたプロデュース。プラス自分を上げていくためのプロデュース、という意味では先を考えるんですけど、なかなか難しい。やっぱその時々で状況や場面が変わっちゃうので、あまり先のことまで考えすぎるのもよくないなとは思ってますね」。 デビュー15年。海外修行から戻ると破竹の勢いでジュニアヘビー級のトップに駆け上がり、プロレス界でも無二の個性と人気を誇る有名選手になった。昨年は802のDJまで務め、「すごく充実を感じてる」と胸を張った。だが、「プロレスに関してはこれでいいのかなって戸惑いがあります」と思わぬ言葉が飛び出した。 「最近、自分の中で“守りに入ってしまってるな”とすごく感じてて。以前は若さで上目指してガンガン行って、上に突っかかっていけばよかった。いざジュニアのトップに立つと目線が変わるんですよね。後輩も増えて、下からの突き上げを食い止める立場になった」 王者、そして年齢的にも中堅選手としての貫禄が求められ「ここ1、2年あまり攻めれてないな…と。それがすごいレスラーとしてつまんなくなってきて。何か面白いことしなきゃと思ったり、守られた人生でこの先いいの?この安定を取っていいの?ってすごく感じてる年頃です」と打ち明けた。 1月4日には、2020年にコロナ禍で流れた内藤哲也との初対決がついに実現する。所属ユニット「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」(以下LIJ)の創始者であり、団体人気を支えるヘビー級の象徴的存在であり、自身にプロレスを教えてくれた師匠。「最初で最後」と覚悟を決めて臨むほど特別な相手だ。 「勝とうが負けようが、試合後どんな思いになるのか。それは自分が一番気になるところで。世間では“LIJを離れるか?”とか言われてるけど、そんなことは考えないでほしいなって思うんです。離れる気は今のところないです」 攻めが足りないという葛藤を抱える中、師匠と袂(たもと)を分かつ選択はファンに衝撃と刺激をもたらすだろう。でもヒロムは言う。「離れること、内藤さんを裏切ることが果たして自分が思う攻めなのか。(裏切ることは攻めの発想として)簡単なんですよ。それはちょっと違うかな、自分的には別に面白くないなって思ってます」。 では、自己プロデュースの天才が描くイッテンヨン後の高橋ヒロムは?「25年はプロレス界で攻める年にしたいんですよ。何かを起こしたい。もしかしたら今年から来年にかけてになるのかもしれないですし…何かをしたいなとは思ってますね」と期待をあおった。 さらに、DJ番組「Escuchame802」は昨年末に最終回を迎えたが、「必ず戻って来ます!3カ月間担当して、自分なりのリズムがつかめたんですよ。シーズン2が決まったらブランクを感じさせないしゃべり、いやパワーアップして帰ってきますよ」と誓った。 プロレスラーとしても、FM802と新日本プロレスの友好関係をつなぐ「顔」としても、高橋ヒロムから目が離せない1年になりそうだ。(終)