アドリブが全開の松田優作を演技を満喫できる!渡哲也主演の名作ドラマ「大都会PARTⅡ」
日本テレビ系ドラマ「大都会 PARTII」は、1977年4月から翌年3月まで放送された。前作「大都会 闘いの日々」に続いてのシリーズ第2作であり、石原プロモーション製作のテレビドラマとしても2作目にあたる。前作からは大きな路線変更がなされており、ハードなアクションとユーモアを加えた、エンターティンメント性の高い作品に仕上った。 【写真を見る】車で捜査中の黒岩頼介(渡哲也)と徳吉功刑事を演じる松田優作 主人公の黒岩頼介(渡哲也)は、城西署捜査四課から捜査一課に変わり、石原裕次郎も新聞記者から渋谷病院の外科医・宗方悟郎へと役柄を変えている。前作の特徴でもあった、渡と石原の関係性が強く描かれているが、本作では、刑事と医師という形で、犯罪者を追いつめる男と、犯罪によって傷ついた者を助ける男。共に人の命を守る目的を抱きながら、互いに助け合い、時に対立しながらも強い絆で結ばれているという、まさに「男のドラマ」としての見ごたえは十分。ただ、本作においては、もうひとりの重要な登場人物を抜きにしては語れない。それが、徳吉功刑事を演じる松田優作である。 彼の出世作「太陽にほえろ!」のジーパン刑事や「俺たちの勲章」の中野刑事とは、異なった個性的な刑事像を優作は見事に創り上げた。粗暴で不遜な態度、上司にも平気で歯向かう無頼派。それでいて刑事としては有能で、黒岩の片腕として鮮やかな活躍を見せる。冗談も頻繁に口にするなど、さりげないユーモアを加味した演技は、強烈な印象を残した。彼があまりにもアドリブも多用するので、共演者はじめ現場は苦労もあったらしいが、それでも主役の渡をしっかり立てつつ、キャラを崩すことなく節度を持って「遊ぶ」という高度な演技で楽しませてくれる松田優作は、まさに唯一無二の稀有な役者であると再認識させられる。後の名作「探偵物語」などは、まさにアドリブ全開でそれが作品の肝にもなっていたが、本作での優作は、適度に楽しみながら締めるところをわきまえて抜群のバランス感覚を発揮しており、本作を「優作出演のドラマ作品のベストワン」に挙げる優作ファンも少なくない。 全体的には、アクション色を抑えた前作と大きく異なり、派手な銃撃戦やカーチェイス、軽妙なユーモアなどを盛り込んだ娯楽色の強いタッチなのも魅力的だ。視聴率も前作から大きく躍進し、放送期間も4クールへと延長されて全52話が製作された。ただ、前作の特徴だった人間ドラマ路線も継承し、当時の社会事情を反映した物語や恋愛もの、実際に起こった事件をヒントにした脚本など、多彩なストーリー構成にもうならされる。 渡が演じる黒岩の人物設定にも工夫がみられる。医師を目指して勉強に励んでいたが、大学受験を目前に両親が莫大な負債を残して死亡。幼い妹を養うために上京して職を転々する中、ケンカ騒ぎで大怪我を追って渋谷病院に運ばれ、医師の宗方悟郎(石原裕次郎)に出会う。 宗方に支えられて警察官となり、やがて刑事として活躍するようになる。クールだが内には熱い思いを秘めており、怒りを込めて犯人を追い詰める。上層部の理不尽な命令や要求には真っ向から反発するという黒岩の気骨も見どころだ。徳吉はじめ部下からは絶大な信頼を得ているが、まさに渡の真骨頂ともいえる役どころで、前作同様に魅力十分だ。 城西署刑事課の面々も個性抜群で、大ベテランの丸山刑事(高品格)、実直な大内刑事(小野武彦)、秋田訛りの好人物・平原刑事(粟津號)、俊足の若手・上条刑事(峰竜太)ら。さらに途中で加入する頭脳派の神刑事(神田正輝)と怪力自慢の宮本刑事(苅谷俊介)の登場以降は、より面白くなったという印象だ。特に毎回のように行われる徳吉と宮本の小競り合いは一興だ。 絶妙なアドリブで視聴者を楽しませつつ、鋭い洞察力と素晴らしい行動力で大活躍。後輩刑事へのツッコミや上司への大胆な意見など、松田優作演じる徳吉に毎回魅了される「大都会PARTII」は、今見ても色褪せない名作だ。 文=渡辺敏樹
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