「セビージャは僕の人生であり、すべてだ」現役引退を表明したヘスス・ナバス、最後にチームメイトにエールを贈る「ユニホームのために全力を尽くすんだ」
これほど愛された選手も珍しい。 実績はクラブ史上最高のレジェンドと呼ばれるに相応しいものだ。セビージャの黄金時代とともに現役時代を過ごし、その間、手にしたタイトルは、ヨーロッパリーグ(EL)が2回、その前身のUEFAカップが2回、コパ・デル・レイが2回、UEFAスーパーカップが1回、スーペルコパ・デ・エスパーニャが1回の計8つだ。スペイン代表の一員としても史上最多の4つのタイトル(ワールドカップ1度、EURO2度、UEFAネーションズリーグ1度)を獲得した。 【動画】ヘスス・ナバスのラストゲームとなった18節マドリー戦ハイライト もっともヘスス・ナバスが愛されたのは、その純粋にサッカーに向き合う姿勢にあった。「有頂天になることは決してありませんでした。共有できることは何でも共有し、チームメイトやライバルの悪口を言うことも一切ありませんでした」と母親のアウロラがその人柄を称賛すれば、セビージャのカンテラ時代にナバスを指導し、腰に爆弾を抱えていることを承知の上で昨夏、EUROに連れて行き、ともに歓喜を分かち合ったルイス・デ・ラ・フエンテ監督も、「ヘススは優秀なフットボーラーになることとナイスガイになることの両立が可能であることを証明した」と評価する。 デビュー当時のチームメイトの1人で、現在も家族ぐるみの付き合いが続いているというフレデリック・カヌーテは、「ナバスがどのようなプロセスを辿ってリーダーになることができたかを振り返るのはとても興味深い。10代の頃からサッカーが大好きで、その情熱を周りの選手にも感化させていた。彼のキャリアは賞賛に値する」と、その成長ぶりに驚嘆する。 もともとリーダーの柄ではないが、近年はキャプテンとして振る舞い、そして人間性でチームを引っ張ってきた。ナバスは、これまで一緒に戦ってきたチームメイトに対してエールを送る。 「僕は腰の痛みと戦いながら、最後の日までピッチ上で全てを捧げる覚悟でプレーを続けてきた。彼らにはそのレガシーを受け継いでほしい。僕と同じことをしてほしい。ファンはきっと感謝の気持ちを示してくれるはずだ。セビージャのユニホームのために全力を尽くすんだ」 セビージャの新キャプテンに就任したネマニャ・グデリは、「君はいなくなるけど、君が残していった価値観やレガシー、そして(ナバスのセビージャの元チームメイトでともに若くしてこの世を去った)アントニオ・プエルタとホセ・アントニオ・レジェスとの思い出がドレッシングルームで生き続けるよう、強い覚悟を持ってキャプテンを務めるよ。いつの日か、次期キャプテンに腕章を託す時、君が僕のことを誇りに思ってくれることを夢見ている。そのために毎日懸命に努力するつもりだ」と、そのナバスのメッセージを受け取って行動することを誓った。 「僕にとってセビージャはすべてだ。僕の人生であり、すべてなんだ。サッカーを楽しみ、ファンに喜びを与え、みんなから愛され、人として成長できた...。すべてだよ」 サッカーを愛し、誰からも愛された男は2024年12月22日、サンチャゴ・ベルナベウでのレアル・マドリー戦を最後に、20年以上に渡る現役生活に終止符を打った。 文●下村正幸
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