北海道・ニセコでラグジュアリーウェルネスリゾート「MUWA NISEKO」が開業──日本の最北端で「世界一の雪」を味わう
2023年12月15日に誕生して話題を集めている「MUWA NISEKO」と、コロナ禍以降、約8割の観光客が戻ったという“今”のニセコを体験した2泊3日の試泊記をお届けする。 【写真を見る】ホテル内をチェック!
世界のNISEKO
世界でも有数の雪質を誇る北海道・ニセコに、新たなコンドミニアムホテル「MUWA NISEKO」が誕生した。 ニセコ地域は、標高1898mの羊蹄山と標高1308mのニセコアンヌプリ山を最高峰とするニセコ連峰に囲まれた山麓地域で、日本海からの水分を多く含んだ大量の降雪に恵まれる。過去10年間は、1シーズン平均10メートル以上の降雪を記録しているが、地元の人は、「今シーズンは、暖冬の影響もあって雪が少ない」と口を揃える。雪質はニセコ特有の地形のため、ふわふわの軽いパウダースノーが特徴だ。その軽さから“シャンパンパウダー”と呼ぶ人もいるという。その極上の雪が味わえるスキーリゾートは、2000年以降に多くの外国人観光客を集め、今や名実ともに日本屈指の国際リゾート地といってもいい。 なかでも、MUWA NISEKOが位置するひらふ地区は、温泉などがあったことで早い時期から開発され、欧米風のカフェやフードトラック、スポーツショップなどが建ち並ぶ。レストランやバーなどのナイトライフも、近隣のどこよりも充実している地域だ。 MUWA NISEKOからもっとも近い空港は札幌の新千歳空港だ。そこからホテルまでは、クルマでおよそ2時間半の距離。街に出るとタクシーはなかなかつかまらないし、Uberのサービスもない。よって、MUWA NISEKOのような送迎サービスがなければ、空港でレンタカーを借りるもよし、JR函館本線の倶知安(くっちゃん)駅まで電車で行く方法もあるし、ひらふ地区まですぐのシャトルバスが、最終停車時間20:00~22:00で運行している。グリーンシーズンに訪れるのであれば、新千歳空港からリムジンバスでニセコ駅まで行き、レンタサイクルを利用するという手もある。 ひらふ坂には、入口付近から坂の途中にかけて高級ホテルからバックパッカー向けのホステルまで、国内外のコンドミニアムがひしめきあっている。MUWA NISEKOは、そのホテル群を抜けたグランヒラフスキー場の麓にある。つまり、ゲレンデへスキーイン・スキーアウトできる施設なのだ。とくに1階と2階の「スキーイン・スキーアウト」の名を冠した11室は、プライベートテラスからゲレンデにダイレクトにアクセスできるので、重たいギアを担いでリフトへ向かう苦労がない。 地上7階地下2階建てのホテルには全113室の客室があり、ひとり旅やカップル向きの約47平米のスタジオルームから、約411平米の5ベッドルームペントハウスまで様々だ。 今回、私は3階の「キングスイート アンヌプリ」に宿泊した。約80平米で、アンヌプリ山が眼前に広がるロケーションに心が踊る。最大3名の宿泊が可能で、部屋の間取り図には記載されていないが、リビングルームの壁面に3人目の寝床となるマーフィーベッドが収納されている。 すべての部屋にキッチンが備わっていて、食器や調理家具、大型の冷蔵庫に、ミーレのビルトインオーブンが付設している。クルマを10分ほど走らせると、肉や海鮮などの食材がなんでも揃う大型スーパーが、さらに5分ほど走らせると、オーガニックな地元野菜や調味料を販売する道の駅もあるので、滞在中の何日かは、北海道の美酒美食とともに宿にお籠もりというのも楽しいだろう。 館内で食事を楽しむなら、2つのレストランがある。ホテルロビー階にあるイタリアンの「HITO by TACUBO」は、いま東京でもっとも予約困難なレストランのひとつ「TACUBO」のオーナーシェフ・田窪大祐(たくぼ・だいすけ)が監修しており、代名詞となっている薪火調理を、ここ北海道で味わうことができる。十勝牛を使用したステーキは、薪火を使用することでゆっくりと火が入り、中には水分が残るので、表面はしっかり焼けてカリカリに、噛むと、とろりとした絶妙な口当たりだ。 HITO by TACUBOの同フロア逆サイドには、「すき焼き割烹 日山」がある。2011年から10年連続でミシュラン一つ星を獲得した老舗で、競り・加工などから、牛肉調理に関わるすべての工程を日山グループで担っている。すき焼きとしゃぶしゃぶから選ぶことができるコースのメインでは、日本橋の本店が選別した生産者から運ばれてくる肉を用いる。その日の旬によって、日毎に異なる食材を使用する茶碗蒸しなど、フレキシブルなメニューが嬉しい。ペアリングは、余市のワインをはじめ、北海道のクラフトジンやNMのシャンパーニュまで、幅の広いメニューが揃う。 もちろん、山頂や山麓にはレストランのほかにキッチンカーも多く出店しているが、そのほとんどがリゾート価格であることは知っておいたほうがよい。 冬季は23時まで営業している地下1階のスパは、ナイター後のリラクゼーションとしても活用できる。カップルルームもあり。 ■アフタースキーは温泉で MUWA NISEKOは、マッサージに特化したスパにくわえて、ロビー階の大浴場と、7階に眺望抜群のインフィニティ温泉を備えており、どちらも源泉かけ流し。泉質は、ミネラルを豊富に含んだ柔らかなあたりで、血行促進や疲労回復の効果があるとされる。インフィニティ温泉は、ニセコ地域の温泉宿泊施設としてはいちばん高い場所に位置するので、ゲレンデや他宿泊施設を眼下に、目の前には羊蹄山が広がる雄大な景色を臨む。ハラハラと舞う雪を眺めながら、風にあたって冷たくなった頬に熱めのお湯がバシャリとあたると、じんわりと温まり、なんとも贅沢な気分になる。 ニセコのゲレンデは、ビギナー用からアンヌプリ山頂まで、バラエティに富んだ地形を持っている。木々の間隔が絶妙なことでも有名で、海外ではハイキングやヘリコプター、スノーモービルで行くようなオフトレイルも体験することができる。少し足を伸ばして花園エリアに行くと、北海道最大級のテレインパークもあるので、朝から晩までスノーアクティビティを堪能したあとには、温泉でのんびりとアフタースキーに浸ってみてほしい。 ニセコ地域は、新青森から札幌までを結ぶ北海道新幹線が2030年に開業予定で、北海道横断自動車道と倶知安IC整備も計画されている。少しクルマを走らせるだけで、「建設予定地」と書かれた看板をいくつも見つけることができ、今もなお開発が続いていることがわかる。 冬は海外からの観光客に絶大な人気を誇るニセコエリアだが、雪解けが進むと、ゲレンデは緑豊かな山林に姿を変え、北海道の豊富な農・水産物が市場に出回り、サイクリングやゴルフ、地元の酪農場、蒸留所、ワイナリーなどを楽しむことができる。混雑を避けてニセコを楽しみたい人は、グリーンシーズンにこそ訪れてみてほしい。 新型コロナ禍に覆われた厳しい数年間を経て、復活しつつあるニセコ。訪れるたびに刺激がもらえるその行く先を、これからも見守りたいと思った。 ■MUWA NISEKO 住所:北海道虻田郡倶知安町ニセコひらふ1条3丁目10番1号 電話:0136-23-1010(代表) URL:https://www.muwaniseko.com/ja/
文・松村亜希 編集・岩田桂視(GQ)