「逆転の」早田ひな、目指すは王者フェデラー…初の五輪で日本勢初の「金」なるか
[エース出陣]<1>…卓球女子 早田ひな 23 日本生命
夏のパリ五輪が開幕するまで1か月を切った。目前に迫った大舞台で、注目競技の日本のエースたちはどんな戦いを挑もうとしているのか。担当記者が紹介する。
卓球女子シングルスの金メダルは、1988年ソウル五輪で正式種目となって以降、9大会連続で中国勢が独占してきた。その無敵の相手の打倒に、日本のエースとして初めての五輪で挑む。
「逆転の早田」を自任する。劣勢での驚異的な粘りを強く印象づけたのは、昨年5月、南アフリカ・ダーバンで開かれた世界選手権個人戦で見せた世界ランキング3位(当時)の王芸迪(中国)との激戦だ。
最終第7ゲームでは、8―10と土俵際に立たされても、みじんもひるまなかった。このポイントも含めて9度もの相手マッチポイントをしのぎ、最後は21―19とついに逆転。歓喜の涙があふれた。
中国のトップ選手になかなか勝てず、「早田は競るけど負ける」という声があることをずっと意識していた中で、自分の殻を破った瞬間だった。以前は中国勢に対して格上との遠慮からか、「思いきってやろう」と思うだけ。ところが、ダーバン大会では試合に集中する感覚があり、「同じ土俵に立って、ちゃんと勝負をしにいっている。ここからだなと思った」という手応えがあった。
秋には中国・杭州でのアジア大会シングルスで王芸迪と再戦し、4―3と撃破。中国のトップ選手に連勝を飾った。
中国勢に好結果を残す一方、国内での存在感も圧倒的だ。今年1月の全日本選手権シングルスは2年連続で3度目の優勝。この大会まで、複数の大会による2年間の五輪代表争いで積み重ねたポイントは910・5点。536点で2位の平野美宇(木下グループ)、471・5点で3位の伊藤美誠(スターツ)に大差をつけ、目指していた「ぶっちぎり」での代表入りを果たした。
逆境をひっくり返してきたのは、試合の展開ばかりではない。4年前、東京五輪の代表からもれた後、「ここから4年でどう変わるか。逃げずに頑張る」と強い決意を固めていた。全日本選手権の制覇、五輪でのデビューはいずれも同学年の平野、伊藤より遅れたが、たゆまぬ努力で、第一人者の地位を確立した。