本郷和人『光る君へ』中宮定子の身を案じる「女房」清少納言はいよいよ『枕草子』執筆へ…そもそも女房になるのに求められた<身分>と<素養>とは
大石静さんが脚本を手掛け、『源氏物語』の作者・紫式部(演:吉高由里子さん)の生涯を描くNHK大河ドラマ『光る君へ』(総合、日曜午後8時ほか)。第二十話は「望みの先に」。花山院(本郷奏多さん)の牛車に矢を放った一件で、伊周(三浦翔平さん)と隆家(竜星涼さん)に厳しい処分を命じた一条天皇(塩野瑛久さん)。さらに、定子(高畑充希さん)は内裏をでることを命じられ――といった話が展開しました。一方、歴史研究者で東大史料編纂所教授・本郷和人先生が気になるあのシーンをプレイバック、解説するのが本連載。今回は「女房」について。この連載を読めばドラマがさらに楽しくなること間違いなし! 竜星涼さん演じる隆家はのちに日本を守った英雄に!あの道長が苦手とした<闘う貴族>隆家とは何者か * * * * * * * ◆定子の身を案じる女房・ききょう 第二十話のラストにて、定子の身を案じた女房・ききょうは、まひろとともに中宮定子の屋敷へと潜入しました。 庭に隠れて様子をうかがっていると、検非違使たちが屋敷へ突入。絶望の淵に立った定子は短刀を持ち出すと、その場で自らの髪を切り落とした…という衝撃的な話が展開しました。 次話予告では「春はあけぼの」の一節も登場し、ネット上では「いよいよ枕草子爆誕!」との声も。 そこで今回は今さらながら、「女房」という身分について考えてみたいと思います。
◆女房と端女 そもそも女房というのは、貴人に仕えた女性のことを指します。実家は貴族です。 一方で端女というのは庶民の娘で、薪割りとか、荷物運びとか、水組み、掃除に洗濯に料理つくりなど、色々な仕事をします。 庶民といっても、そこそこの暮らしをしていないと高貴な人の家に住みこめません。なので、上奏農民の娘が主、でしょうね。 ちなみに給金は生活に則した「もの」を賜ることで支払われます。前近代は、人件費がものすごく安い時代なのです。
◆当時のレベル 以上を踏まえつつ、女房について説明します。 あらためて、西暦1000年をまたいで生きていた清少納言を例に取ると、彼女は一条天皇の中宮(正妻)である藤原定子に仕えた「女房」です。 その父親も夫も息子も、国司を務めたクラス(現在なら県知事)でした。 彼女のライバルでもあった紫式部や和泉式部といった女性も、親なり夫は国司クラスです。 つまり、このころは、地方官である国司のお嬢さんレベルが、高貴な女性に親しく仕えるということがあった。 和泉式部は親王殿下と恋仲になってさえいます(身分違いと批判されたようですが)。
【関連記事】
- 下重暁子 藤原道長からいじめ抜かれた定子を清少納言は懸命に守ったが…紫式部が日記に<清少納言の悪口>を書き連ねた理由を考える
- 『光る君へ』政権の座に就いた道長はなぜか「10年間無官」の為時を<最上格の大国>越前守に…まさかの大抜擢に対して広まった逸話とは
- 『光る君へ』で竜星涼さん演じる藤原隆家はのちに日本を守った英雄に…あの道長が苦手とした<闘う貴族>隆家とは何者か
- 道長権力増大の中で直面した姉・定子と兄・伊周の死…『光る君へ』で竜星涼さん演じる<闘う貴族>隆家が日本を危機に陥れた異賊「刀伊」を迎え撃つまで
- 対馬・壱岐を壊滅状態にした異賊「刀伊」を、なぜ『光る君へ』で竜星涼さん演じる隆家が迎撃したのか?ロバート秋山さん演じる実資との交流から読み解く