2014年「アベノミクス」で賃金は上がるのか?
中小企業まで波及するのか
ーーーー大企業と中小企業の格差もある。 収益とモノの関係でいくと、業績がいいのは大企業。一方で、人出が不足しているのは中小企業。みんな大企業志向が強い中で、中小企業は賃金が安いのでなかなか働きたがらない。 大企業は儲けが出ているので、賃金を上げようと思えば、簡単ではないが、上げられなくもない。ただ人も足りている。むしろ人件費を下げているから収益がいいという側面もあります。いま注目されている春闘の賃上げでも、賃金を上げますと言う企業が出てきています。大企業は、リーマンショックの後、一時的に悪い時期もありましたが、継続して業績が良くなっているので、政府が賃上げ要請したことに対して、素直に応えることができた部分もあると思います。 一方で、中小企業はどうかというと、人出が不足しているので、できれば賃金を上げて人を集めたい。ただ収益はどうかというと、まだまだ経営状況が厳しく儲かっていない。なので賃金が上げられないという状態。そこでギャップが生まれてしまっていることが一つ問題です。 ポイントとしては、中小企業まで収益改善の流れが広がってくるのか。日銀短観などでは足下でも広がりつつあるという調査結果が出てきています。それが続けばいいのですが。ただこの春に予定されている消費税アップの影響は、どうしても中小企業にしわ寄せが来やすい可能性があるので、消費税増税が一つの大きなヤマになってくくるでしょう。まず8%へのアップを乗り越えることができるかどうかですね。
どれくらいの景気回復が必要?
ーーーーどれくらい景気回復が続けば賃金にも反映されるのか 景気の回復が、時間がたてば本当に波及していくのか、それとも構造的に日本は 大企業は良くても、中小企業は何年経っても良くないという状況なのか、これまで疑わしかった部分はあります。少なくとも、今後景気回復が続いて、消費税増税があっても、あまり景気が悪くならなかった、となれば、企業にとっても消費者にとっても 一つの自信につながるかもしれません。そこで「安心」だということになれば、設備投資を増やそうとか、人出が不足するから賃金を上げよう、という動きにつながります。非正規ではなくて正社員を採ろうという流れに少しでもなれば。 ただ、ずっと20年くらい景気が悪くなっているのを続けて見ていると、今年1年くらい景気が良くなったくらいでは難しいかもしれない。だいぶムードは変わりましたが、自信が持てるかというと、まだ不安な部分はあると思います。いずれにせよ、そうした企業のマインドが変わるためにも、継続して景気が良くなることが大事です。 ■尾畠未輝(おはた・みき) 調査部 研究員 2008年3月慶應義塾大学大学院経済学研究科修士課程修了。同年4月三菱UFJリサーチ&コンサルティング入社。金融機関経営コンサルティング業務を経て、現在、調査部で個人消費、住宅、雇用・賃金など家計部門を中心に国内マクロ経済調査を担当。日本経済新聞「ゼミナール(賃金はあがるのか?)」連載やプライムコンサルタント「プライムブックレット」、財団法人労務行政研究所「労政時報」および「HR Watcher(コラム)」など定期寄稿。