愛と経済の伝道師“宗さま”こと宗正彰「上がり始めた”長期金利”と“2024年の株主総会の特徴”」を解説
◆実質賃金は25ヵ月連続マイナス…資産運用をしないのはリスク?
やしろ:円安傾向もまだまだ続く中、物価高もしばらく続きそうです。何か対策はありませんか? 宗正:今年のゴールデンウィークには、大規模な為替介入もありましたが、日本単独の介入はやはり時間稼ぎにしかすぎませんでした。一時は円高に振れた為替も、今は元の水準まで戻りました。 物価高も続きそうですよね。そして毎日の積み重ねでジワジワと効いてくるのが、食費のような生活費です。誤解してはいけないのは、金利が上がること自体は悪いことでも何でもないんですよ。 金利は経済の体温計なんて言い方もします。景気が良くなれば金利も上昇しますし、むしろ上がらなくてはいけない。必要なのは金利や物価の上昇に連れて、私たちの収入も上がること。そして手持ちの資産も同時に殖やすことなんです。 今年の4月の基本給などにあたる所定内給与は前年同月比で2.3%増加しました。この上昇率は、29年6ヵ月ぶりの伸び率でした。ただ物価上昇を加味した実質賃金は、25ヵ月連続のマイナスということで、過去最長なんですよ。 そのため手持ちの資産も運用しないままでいると、そのまま目減りするだけです。確かに投資に運用リスクはつきものですが、何もしないのは明らかに良くないですよね。 やしろ:何かしらの対策をしなければいけないというタイミングが、今なのかもしれないですね。
◆6月下旬に向けて株主総会ラッシュ
やしろ:6月下旬は、上場企業の株主総会が数多く開かれる時期だそうですが、この時期に集中している理由は何かあるのでしょうか。 宗正:日本の上場企業は、この国の会計年度と同じ3月末を決算期末としている企業が多い。会社法でも定時株主総会は決算から3ヵ月以内に開くよう定められています。そのため3月末から3ヵ月以内となると、自ずと6月下旬に株主総会も集まりやすいんです。 ただ、株主総会は株主が議決権を行使する場ですが、何も議決権行使の基準日を3月末の決算日と合わせなくてもいいんじゃないかという考え方もあります。 実際に欧米の上場企業はこの2つを敢えて合わせる慣行もありません。決算が終わって、4ヵ月から5ヵ月後に株主総会を開く企業も多いんです。日本でもできないことはないんですが、まだまだその動きは見えてきませんね。 やしろ:そして今年の株主総会の特徴ですけれども、注目すべき点は何かありますか? 宗正:「もの言う株主」(=アクティビスト)って、最近よく聞きますよね。その動きが年々活発になっています。株主総会シーズンに向けてアクティビストを含む株主提案を受けた企業の数は、現時点で少なくとも約90社と過去最高レベルなんです。主な提案内容は、経営陣の交代や、低収益の事業からの撤退などが多いですね。 一方で、そんなアクティビストの提案内容に強く反発する企業の動きも近年目立ちます。企業側も黙って聞いてばかりはいられないといった強い姿勢です。 また、東京証券取引所も上場企業に対して、資本効率や株価を意識した経営に取り組むよう求める動きが強まっています。こうした動きは海外投資家のウケも良く、こうした動きが近年、日本に投資資金が集まる要因の1つにもなっています。