こんなん、高すぎて行けないよ!ディズニーの「富裕層シフト」は正しい戦略なのか?
「ディズニーリゾートが完全に富裕層にターゲットを絞った」――こんな噂が囁かれています。実際に、アメリカ・フロリダ州のディズニーワールドで最大449ドル(約6万9000円)の入場パスが発売されました。この戦略は正しいのでしょうか?ディズニーは庶民にとって手が届かないエンタメに変貌してしまうのでしょうか?(百年コンサルティング代表 鈴木貴博) 【画像】東京ディズニーリゾートのパスポート価格「驚きの推移」 >>後編『ディズニーが「パークチケット」を値上げしても「ディズニー+」は値上げしない深いワケ』を読む ● 「いくらなんでも高すぎる…」 ディズニーの富裕層シフトは正しい戦略なのか? アメリカ、フロリダ州のディズニーワールドで、プレミアム顧客向けに449ドル(約6万9000円)の入場パスが発売されました。このパスを持っていると待ち時間なく専用レーンからアトラクションに乗れるということです。 実はこの「ライトニングレーン・プレミアムパス」は449ドルだけでは買えません。 購入するためにはディズニーが経営する特定のホテルにも宿泊しなければならないのです。ディズニーに対して1日で10万円以上の出費が賄える富裕層だけが選ぶことができる本当にプレミアムなオプションだと言えそうです。 日本でも、東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドの決算では今年4~9月期の入園者数は2%減少した一方で、売上高は5%増加しています。昨年の値上げで客足が減ったにもかかわらず客単価が順調に増えているのです。 エコノミストの間では、最近のディズニーリゾートはグローバルで完全に富裕層にターゲットを絞ったようだと噂されます。その戦略は長期的に見て正しいのでしょうか? そして、庶民にとってディズニーは手が届かないエンタテインメントに変貌してしまうのでしょうか?経済学と社会学、ふたつの視点から分析してみたいと思います。
● 需給の考え方では これまでの値上げは「正しい戦略」だった 最初に、経済学の視点から検証してみます。 エコノミストがそう考えているように、仮にディズニーが世界各地のディズニーリゾートの価格戦略を富裕層にフォーカスして設定しているとしたら、その戦略は経済学的に正しいのでしょうか? この問題を考察するために使える経済学のツールは、需要供給曲線の考え方です。 需要供給曲線の考え方では、価格を上げれば需要が減っていきます。逆に価格を下げれば供給が減ります。その均衡点で経済的に最適な価格が神の手で決まります。 ディズニーリゾートで言えば、値上げをしても来園客が減らないうちはまだ価格は最適ではありません。同時に値上げをすることで供給を増やせる、つまり新しいエリアやアトラクションを建設できるようになります。 これまでコロナ禍の影響を除いて考えれば、ディズニーリゾートは値上げをしても入園者が増えてきたので、需給の考え方としては値上げは経済的に正しかったといえます。