こんなん、高すぎて行けないよ!ディズニーの「富裕層シフト」は正しい戦略なのか?
● 2024年4~9月期の入園数ダウンは マイナスとは限らない 一方で、今年の4~9月期に入園者数が減少したことはどう考えるべきでしょうか? ここは実は微妙な問題が3つあります。 まずそもそも今年の夏は酷暑だったので、その要因を減少要因として考慮する必要があります。 ひとことで言えば、パークの入園者が安定的に見込める下期の入園者が減るのか減らないのかを見ないと本当のことはわからない。これがひとつめの問題です。 ふたつめにインバウンドの要因があります。今年はインバウンドの外国人観光客がコロナ禍前を超えて最大になりました。円安の影響で彼らの購買力は旺盛です。そして彼らにとって日本旅行の人気の目的地が東京ディズニーリゾートです。このインバウンド需要は長期的に増加する一途だと予測されています。 これを難しく言えば「インバウンドの需要曲線が毎年上にシフトする」と言います。わかりやすく言えば、来年は仮に価格が今年よりも高くなって、日本人の入園者が減ったとしても、外国人観光客が増えてその減少を補ってくれる可能性があるということです。 ですから、今年減ったことが長期的に悪いかどうかはまだわからないのです。
● 「行列が減るほどパークは儲かる…」 アメリカのディズニー幹部が語ったワケ そして3番目に、ディズニー自身が入園者数をもう少し減らしたほうがいいいと考えているフシがあります。 私は8年ほど前にアメリカのディズニーで戦略を立案していた人物にインタビューをしたことがあります。彼が言うには、当時のディズニーの発見として、「アトラクションの行列を減らせば減らすほど、パークは儲かる」というのです。 これは当時、ファストパスが年々便利になっていったことに関係しています。 顧客の視点で見ればせっかくディズニーリゾートに出かけたのに、アトラクションに乗るために長い列に並ばなければいけないのはうんざりです。かなり以前のディズニーはその負を解消するために、行列の途中でもちょっとした楽しみが得られるように列の間に見せ場を設置したり、キャストがちょっとしたダンスを見せたりといった工夫をしていました。 ところがファストパスを導入する頃から、経営の視点が変わります。 列がなくなれば顧客が喜ぶだけでなく、パークの売り上げも増えるのです。理由は単純で、列に並ぶ必要がなければその時間、顧客はショッピングをしたり、カフェでスイーツを食べたりできるのです。 そこで2010年代後半のディズニーは、パークの最適なキャパシティを再検討するようになりました。2時間待ちの行列が園内のいたるところにあった頃の最適な入園者数と、その行列がなくなったときの最適な入園者数は違うというわけです。 これは経済学的にはオーバーツーリズムの問題と同じです。観光地に観光客がたくさん集まりすぎると、どこに行っても満員で観光客も疲れてしまい、お金を落とさずにとっとと帰ってしまうようになります。 入場税などをとって観光客を意図的に減らすことで、観光地のキャパシティに最適な人数がそこに居て、楽しくお金を使ってくれるのが経済学的には一番いいのです。