「トヨタとNTTの提携」が失敗なら日本経済に大ダメージ…教訓にすべき“iモードの失敗”とは
トヨタ自動車とNTTがAI・通信の共同取り組みに合意した。ソフトウエアの進歩により、自動車、家電などハードウエアの既成概念、常識が変わりつつある。特定の機能を提供するモノの生産に固執していては、企業の長期存続は難しくなるだろう。世界では米テスラがロボタクシーを発表し、マイクロソフトは3兆円を投じてAIの競争力向上を目指している。海外戦略の重要性も高まる中、教訓になるのは、「iモードの失敗」だろう。わが国企業の優位性=「モノづくり力」を維持するには、どうしたらいいのか。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫) ● 日本の優位性=モノづくりの力は維持できるのか トヨタ自動車とNTTが、交通事故ゼロ社会の実現に向け、モビリティ分野におけるAI・通信の共同取り組みに合意した。今回の連携によって、トヨタやNTTは「ソフトウエア・デファインド・ビークル」(SDV)などの開発に取り組む。KDDIも参画する意向を示した。 わが国を代表する両社の連携は、人工知能(AI)関連分野におけるソフトウエアの重要性と、その開発手法の選択肢を明確に示している。AIという最新のソフトウエア、その利用を支えるIT先端技術の実用化で、これから自動車などの機能が大きく変化することが予想される。 それに伴い、多くの有力企業はソフトウエア分野での競争力向上に向け、積極的に経営資源を投入している。米・中の有力IT先端企業に後塵を拝することがないよう、開発投資を行うことが必要不可欠だ。 それに加え、わが国企業の優位性=モノづくりの力を効率的に使うことが重要だ。新しい発想の実現には、新しい素材、新しい製造装置(工作機械など)が欠かせない。わが国の企業はそうした分野で国際的な競争力を残している。 中国経済の減速、高金利による米国の個人消費鈍化懸念など、わが国経済を取り巻く環境は不安定化している。トヨタとNTTの提携発表を呼び水に、積極的にソフトウエア開発、その実用に取り組む国内の企業が増加すれば、わが国が自力で景気の持ち直しを目指すことができるかもしれない。