「ディープインパクトに武豊が乗っていなかったら…」調教師が明かす武豊の“神騎乗”「思わず二度見、三度見したほど驚いた」早業とは?
思わず二度見、三度見。同業者も気づかない早業
55歳の千田輝彦調教師は、競馬学校騎手課程の4期生。武の1年後輩にあたる。在学時はごく普通の先輩・後輩の間柄だったが、千田が伊藤雄二厩舎に配属されたことがきっかけとなって公私を共にする時間が増えていった。ファインモーションやエアグルーヴなど、多くの名馬を輩出し続けた名門だけに、騎乗依頼を受けて頻繁に厩舎を訪ねてくる武と毎朝のように顔を合わせたからだ。 千田は多くの勝ち鞍を稼ぎ出すジョッキーではなかったが、調教騎乗によって多くの名馬の背中を知っており、それが調教師のキャリアに生かされている。 伊藤雄二厩舎の所属馬ではスカーレットブーケ('88年生まれ、牝、父ノーザンテースト)が唯一の重賞勝ち('92年京都牝馬特別)。同馬は顔の大流星が少し曲がっていたことから「バナナ」の愛称で呼ばれていたが、4つの重賞勝ちが的場均、武豊、千田、柴田政人とすべて違う騎手だったという珍しい記録も残している。「神騎乗なんか要らない、乗りやすい馬だったということでしょう」と千田は懐かしがった。ちなみに、スカーレットブーケは繁殖牝馬としてさらに大成功を収め、ダイワメジャー、ダイワスカーレットと、2頭のGIホースを世に出している。 「武豊の神騎乗といえば、なんと言ってもウオッカ('04年生まれ、牝、父タニノギムレット)の天皇賞・秋('08年)でしょう。逃げたダイワスカーレット、差し脚を伸ばしてきたディープスカイと並んでの3頭の競り合い。豊さんは右手にステッキを持って追っていたはずなのに、ゴールしたときには左手に持ち替えていたんです。見間違えたのか、と二度見、三度見したほど驚きました。ゴールまで数完歩という場面で手前を変えに出るというのは、並のジョッキーにはリスキー過ぎる行為なんですが、豊さんは何事もなかったようにやっていました。馬って、手綱を持ち替えるだけでグラッと揺れることがありますからね。それを、我々同業者も気づかない速さでやっている。その動きがハナ差につながったかはわかりませんが、僕はこのシーンを繰り返し見て、一人で唸っていたものです」
(「NumberPREMIER Ex」片山良三 = 文)
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