サミット・住友商事の「スーパー超える」売り場 案内係がご用聞き
住友商事傘下の食品スーパー大手、サミット(東京・杉並)の業績が堅調だ。これまで得意としてきた楽しい売り場づくりだけでなく、住商と共にデジタルトランスフォーメーション(DX)による生産性向上も進めようとしている。先々に見据えるのはリテールメディア(小売り広告)の展開など、スーパーを超える存在だ。 【関連画像】サミットは生鮮を除くオリジナル商品のアイテム数を倍増させる(写真=サミット提供) 9月19日午前8時半過ぎ。埼玉県所沢市の「サミットストア エミテラス所沢店」で、オープンを前に店内を見回る男性の姿があった。「サミットの売り場をまねするスーパーは多い。どんどんまねして広がってほしい」と語るサミット会長の竹野浩樹氏だ。親会社の住商でリテイルSBU長も務める。 住商と西武ホールディングス系企業が開発する商業施設「エミテラス所沢」に入る店舗。24日のグランドオープンを控え、この日、近隣住民向けにプレオープンした。西武鉄道の所沢駅から徒歩約5分の場所に位置しており、半径1.5km圏内には約7万人の住民が住んでいる。 住商は1963年、ゼロからサミットの前身会社を立ち上げた。当時、既に米国ではスーパーという業態が広がっており、日本でも必要になるだろうという目算があった。人口が集中する首都圏の中心部をぐるりと囲むように走る国道16号線の内側を中心として、1都3県に集中出店。今回のエミテラス所沢店が124店舗目だ。 新型コロナウイルス禍による特需は一服したが、2024年3月期の売上高は前の期比8%増の3339億円で過去最高を更新。サミットの服部哲也社長は「将来に向けて試行錯誤している最中。これで完成とは思っていない」と明かす。 ●「王道のスーパー」という評価 サミットの特徴の一つは、店舗内で従業員が魚をさばいたり総菜を調理したりするインストアオペレーションの強さだ。「西の関西スーパーマーケット、東のサミット」といわれることもあるほど。竹野会長は「例えば、今では日本の多くのスーパーがやっていることだが、サミットは早い時期からバックヤードをガラス張りで見えるようにし、中も外もきれいにしていると見せるようにしてきた」と話す。 流通アナリストの中井彰人氏は「サミットはまず店舗の立地がいい。常に新しい取り組みに挑戦し、顧客が楽しめるように、売り場の『鮮度』にこだわる王道のスーパーだ」と評価する。 実際、どのような売り場づくりをしているのか。エミテラス所沢店には「おためし下さい」という看板を掲げた一角がある。いわゆる試食コーナーだ。店舗や食品メーカーがお薦めする商品を振る舞うだけでなく、来店客からのリクエストも受け付けている。すぐ隣には来店客からの要望のあった商品を期間限定で置く「“置いてね”におこたえしました!」コーナーもあった。 店内には赤い腕章が目印の「案内係」が歩き回る。「商品を売り込まない」「レジ打ちや品出しといった他の業務をやらせてはダメ」という独自ルールがある係で、来店客から売り場や商品についての質問だけでなく、日々の悩み相談を受けることもある。来店客と話すことで要望や消費者動向などを店舗責任者らに伝える仕事だ。