“防衛特需”三菱重工は大型プロジェクト「看板倒れ」の暗黒時代を抜け出ているのか
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第2次世界大戦期までアメリカには「軍需産業の巨人」は存在しなかった。参戦当初、兵器の生産を主に担ったのは軍需専業メーカーではなく、それまで民需品を手がけていた大企業だった。「シャーマン」戦車を製造したのは英系プレスド・スチール・カー・カンパニーなどの鉄道車両メーカーであり、軍用自動車「ジープ」を生産したのはウィリス・オーバーランド・モーターズ【旧クライスラー傘下の自動車会社】やフォード。ゼネラル・モーターズ(GM)は「フィッシャーP-75」はじめ戦闘機の製造なども手がけ、ゼネラル・エレクトリック(GE)は軍用航空機向けのエンジンなどを開発・生産。「B-29」など爆撃機を手がけたボーイングも大戦以前は民間航空機部門が主力だった。 ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が毎年発表する軍需企業の世界ランキング(2022年版)で現在トップ3を占めるロッキード・マーチン(売上高約594億ドル=約8兆8000億円)、RTX【旧レイセオン・テクノロジーズ】(396億ドル)、ノースロップ・グラマン(323億ドル)の米3社はいずれも1990年代半ばに業界再編目的のM&A(合併・買収)で誕生した。 それぞれの前身企業は、例えば、世界恐慌勃発後の1932年に一度経営破綻した民間機メーカーのロッキード、同年そのロッキードからスピン・アウトした設計技師のジャック・ノースロップが技師仲間のドナルド・ダグラスの支援で立ち上げた航空機製造会社がノースロップ、ダグラスが1921年に設立したダグラス・カンパニーは後にマクドネル・ダグラス【1997年にボーイングに吸収合併】に発展する。そして、マイクロ波レーダーの開発を地道に続けていたレイセオンなど、1940年代までは「いつ倒産してもおかしくない」弱小企業が大半だった。成長軌道に乗ったのは大戦とその後の朝鮮戦争、ベトナム戦争の特需のお陰である。
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杜耕次