「味が落ちた」と絶対に言われたくない 丸の内OL、山形県に移住して創業90年の小さな糀屋を事業承継
◆「引き継いで味が変わった」とは言わせない
――地方の小さな事業を引き継ぐことについて、率直なご意見をお聞かせください。 実際に後継者不足で閉業していく事業も多く見てきましたが、私は世の中のニーズが高いものは継ぎたい人が継いでいくべきだと思います。 また、もともとあったものを丸ごと継ぐ必要は決してなく、新しい世代のやり方で変えていくことも必要だと思います。 まさに温故知新です。 ――今後はどのように事業を展開していく予定ですか? まずは、生糀作りの技術をしっかり身につけ、佐藤糀店時代の売上約300万円を維持することが目標です。 「引き継いで味が(悪いほうに)変わったね」と言われることだけは絶対に避けなければいけないと思っています。 製造を安定させた後は、生糀の専門店としての地位を高めつつ、常温で手軽に楽しめる新商品の開発に力を入れていきたいと考えています。 個人事業主としてスタートしましたので、いずれは売上を倍増させて株式会社化するのが理想です。 これまでお世話になった山形の方々に恩返しすべく、地域の活性化にも貢献できればいいなと思っています。
■プロフィール
國本 美鈴 氏 1988年11月7日生まれ、埼玉県深谷市出身。早稲田大学国際教養学部を卒業後、ケーブルテレビ事業を営む企業に入社。2019年、山形県で米作りに携わる夫との結婚を機に山形県にIターン移住。庄内町地域おこし協力隊でPR業務などを3年間経験した後、90年続く生糀専門店を承継。現在はフルリモートで都内のマーケティング企業に勤めながら、「さくら糀屋」の経営に奮闘している。一児の母。
取材・文/川島愛里