6万人超の生徒を抱える日能研は、2024年中学入試をどう分析し、どんな子供を育てたいのか?
3月7日、銀座ブロッサムで午前と夜、日能研の中学入試報告会「日能研オン・ザ・ロード2024」が行われた。午前も夜も満員という盛況ぶりだ。 基本は日能研の生徒の保護者向けのイベントであるが、入り口で渡す資料が「日能研生の保護者用」と「日能研に通ってない生徒の保護者用」と分かれており、日能研の生徒以外の保護者に対するきめ細かい配慮が感じられた。会場には自由に手に取れる配付物もあり、そこには日能研のさまざまなサービスが紹介されており、また中学入試に頻出の作品書籍などが割引価格で販売されている。会場に入ると、スクリーンに日能研関東の公式YouTubeチャンネルが映し出され、塾の報告会というよりはさながらライブ会場に来たような感覚になる。 【グラフ】栄東中学校の合格者が一番多い塾はどこ? 塾別合格者数の推移を見てみる
私立中学のよさがひろまり、受験率は上昇
会が始まると、日能研関東の関東中学情報部の社員が登壇し、まず「中学受験の合格の花は、受験生1人で咲かせられるものではない」と語り、そこから入試結果の報告に入った。 東大への合格実績が高い、埼玉の栄東が日本一の志願者数を記録 一般的な受験生の数などは首都圏模試センターの数字を扱うが、最大手塾の日能研は独自のデータを発表する。日能研調べで、受験生は6万5,600名で受験率は22.7%。少子化の影響で受験生は減ったが、受験率は高まっている。これは首都圏模試センターのデータと同じである。一方で、コロナ禍での過熱は落ち着いてきたという。 しかし、まだまだ中学受験熱が続くのは、私立のよさが広まっているからではないか。コロナ禍で先が見えない中、子どもの将来を考えた時に、中学受験をすれば高校受験を回避できたり、学校によっては大学まで進学できると考えたりと、安心感があるからではないか。 では今年、人気があったのはどんな学校か。 まずは1月入試の埼玉について述べる。栄東は日本一の志願者数で1万4,016名。1月10日だけでも5,522名が受験をした。東大合格実績に裏付けられた期待値が志願者を増やしているようだ。栄東は近年、A日程は1月10日と11日の2日間の入試にしていたが、2025年は1日のみに戻すという。それにより、どう難易度が変化するかは注目したいところだ。 また、開智所沢は新設校だが、地域密着グループの学校を目指すとPRし、説明会は盛況だった。また、1回の入試で開智と開智所沢の両方を受験できるという利便性も受験生を集めた要因だった。 埼玉の学校への志願者数が増えているのは、東京や神奈川からの受験生が増えているからだろう。理由として、埼玉にそれだけ魅力的な私立校があるということ、さらには交通の便がいいことが挙げられる。東急新横浜線の開業で、埼玉につながる渋谷駅にも出やすくなった。 東京では「チャレンジ層」の回避で、中堅上位校の志望者が増える 次に東京の受験者数はどうだったろうか。 まず、2月1日の御三家では男子が2023年度より100名以上減り、女子は数十人減った。御三家へのチャレンジ回避の傾向があった。その理由として、2023年度はコロナ禍の行動制限解除で、受験生たちもチャレンジしようという機運になったが、翌年はその反動で回避になった。しかし、難易度は変わっていない。 御三家相当である豊島岡、広尾、渋渋も回避される傾向であった。では、その回避した層はどこに流れたか。2月1日は中堅上位校に受験生が流れ、学習院、攻玉社、巣鴨、成城、明大中野、学習院女子、頌栄、東洋英和、普連土、三輪田、法政、明大八王子、明大明治などが受験生を増やした。 埼玉の人気校が新興校であるのと違い、保護者世代でも名前を知っているような伝統校が目立つ。例えば、芝。東京タワーの近くにある男子校で、全員にバイオリンを弾かせたり、いろいろな実験をさせてレポートを書かせたり、調査もさせることで知られる。 同じく男子校の巣鴨は、英語でインプットしたものをどうアウトプットさせるかに取り組んでいる。オンライン英会話や短期間で留学できるターム留学、イートン校へのサマースクールなどグローバル教育に非常に力を入れている。 女子校の頌栄は自分の生き方を考えるライフデザイン教育を実践し、多様な価値観、国際感覚を育んでいる。三輪田は読書教育を他教科・他科目で取り入れ、表現力や視野を高めている。また、法政大学との連携など、高大連携も進んでいる。そういった伝統校の試みが評価されたのだろう。 ちなみに、2月1日の午後は出願者が増えているが、理由は午後入試に人気校が増えたことだろう。午前はチャレンジを回避して、午後に本命を受験するパターンも出てきている。つまり、通常は2月1日に第一志望を受験し、それ以降に第二志望以降を受けることが多かったが、それも変化してきている。 こう話すと「それでは、うちの子の受験の時には、塾と相談して併願のプランを練る必要がある」というようなことを思われる保護者もおられようが、それがいいたいことではない。 人気がある学校はいずれも現状にあぐらをかかず、常に変化している学校である。新たな学び、高大連携といった要素も魅力的だが、教育は「人」であり、先生方が生徒や保護者に寄り添ってくれる、素敵な学校が私立校にはたくさんある。魅力を感じる学校にチャレンジしてほしい。 そういった私立のよさを語ると、次に受験を終えた生徒たちのインタビュー動画が流れた。