日産・ホンダは期中2度目の下方修正…鈍化する世界販売、日系車メーカーに求められる戦略
日系自動車メーカーの世界販売が鈍化している。乗用車メーカー7社の2025年3月期(24年度)世界販売台数予想は前期比1・4%減の2448万9000台で2年ぶりに前期割れとなる見通しだ。24年4―6月期決算発表時点ではプラスを計画していたが、一転してマイナスとなる。中国、東南アジア市場に加え、主力の北米市場で競争が激化。拡販に向けた販売奨励金(インセンティブ)の増加も業績の重荷となる。競争力のある商品、販売戦略が求められる。 【一覧表】日系自動車メーカーの世界販売動向 25年3月期の世界販売台数は三菱自動車を除き、6社が目標を引き下げた。日産自動車とホンダは期中2度目の下方修正となった。スズキとマツダは前期比の増加幅が縮小し、トヨタ自動車とホンダは減少幅が拡大。日産とSUBARU(スバル)は前期比増加の予想から減少予想に転じた。 日産は前回見通しから25万台引き下げた。中国をはじめ日本、北米、欧州など主要地域で引き下げる。特に北米ではハイブリッド車(HV)需要を取り込めず「コアモデルで販売、収益を稼げなかった」(内田誠社長)。販売奨励金の増加などコスト上昇が収益を圧迫。HV投入が遅れる中で「既存の販売力、ブランド力を再構築しながら市場で頑張れるかに尽きる」(同)と厳しい局面が続く。 トヨタは認証問題や品質問題への対応で生産を停止したことなどが影響して目標を引き下げた。ただ下期はこれまで取り組んできた改善活動を生かし、生産水準を戻していく計画。HVなど高い商品力と活動の積み上げで販売費は期初の想定を下回る見通しだ。「北米はリーン(ムダのない)にオペレーションができている。認証問題や品質問題などを学びにして体質を強化していく」(宮崎洋一副社長)とする。 スバルは主力の米国市場でスポーツ多目的車(SUV)「フォレスター」などが好評だが、足元の小売り水準や在庫台数、販売奨励金などのバランスを踏まえ販売台数計画を下方修正した。マツダはSUV「CX―50」などが好調で過去最高の販売を計画する北米を上方修正する一方、日本、中東を含むその他市場での成長減速を反映して下方修正した。 中国、アジア市場も厳しさが増している。中国での新エネルギー車(NEV)市場の拡大を受けて、ホンダは中国販売台数の計画を7万台引き下げた。「中国の台数減は想定以上にスピードが速い」(青山真二副社長)とみて、追加の固定費削減を検討していく。 スズキは軽自動車「スペーシア」が好調な日本、小型車「スイフト」の販売が伸びた欧州を上方修正する一方、インドは上期に実施した生産調整を反映し世界全体では下方修正となった。インド販売について「世界経済の影響も受けながら少し陰りが見えてきている」(鈴木俊宏社長)とする。 三菱自は販売計画を据え置いた。小型SUV「エクスフォース」などが好調なフィリピン、ベトナムでシェアを拡大しつつ、北米では一定程度の販売奨励金を投じて販売台数を確保する。「環境変化に迅速かつ柔軟に対応し計画達成を図っていく」(加藤隆雄社長)方針だ。