“鉄人”玉鷲の意外すぎる特技、優勝2回で連続出場を続ける実力者が語る「長持ち」の秘訣
元関脇・青葉城が持っていた通算連続出場記録(1630回)を塗り替え、大相撲に新たな記録を打ち立てた玉鷲。特別なスポーツ経験が無いまま19歳で相撲を始めたという、異色の経歴を持つ。16日に40歳の誕生日を迎えたばかり。そんな玉鷲のTHE CHANGEとは──。【第5回/全5回】 ■【画像】“鉄人”玉鷲、2回目の優勝を果たした2022年秋場所で賜杯を受け取る雄姿 2019年初場所千秋楽。 「これより三役」の後に組まれた、優勝がかかる、玉鷲ー遠藤の大一番。 この一番を前に、玉鷲の心は冷静だった。 「昨日(14日目)はガチガチだったんですが、なぜか焦りとか緊張感はなくて、『よーし! ここでやってやるぞ!』といい感じに燃えていました。もし負けても、決定戦で勝てばいい……と」 立ち合いから、遠藤が低く踏み込んで懐に入ろうとするところ、玉鷲が右からおっつけて突き起こす。そして、遠藤の足が流れるところを、すかさず左からの突き落として、土俵に沈めた玉鷲。この間、わずか2.5秒。玉鷲の初優勝が決まった。 「(表彰式の)優勝インタビューでは、年甲斐もなく『最高です!』と叫んでしまって(笑)。抑えていた感情が爆発しちゃったんでしょうね……。もちろん、この日に生まれた次男に後押しされた部分も大きかったと思います。 そして何より、34歳でもやれるんだ! と自信になって、自分が生まれ変わった瞬間でもありました」 玉鷲は感慨深く、当時を振り返る。
手芸に料理、手作りが大好き
さて、多趣味なことでも知られる玉鷲。刺繍やビーズ細工、ぬいぐるみ作りなどの手芸、パンやケーキ、クッキーなどのスィーツ作りはプロ級の腕前で、とにかく手先が器用だ。コロナ禍で外出を控えていた頃は、夕食を毎日手作りしていた。 「この前は、刺繍入りのクッションカバーを作ったんですよ。でも、買ったほうがリーズナブルだったかもね(笑)」 と、気分転換がうまくできているのも、「長持ち」の秘訣のようだ。 玉鷲に再び優勝のチャンスが巡ってきたのは、22年秋場所のこと。7月の名古屋場所では、同じ部屋でコロナ感染者が出たことで13日目から初めての休場を経験(連続出場記録にはカウントされない)し、宿舎で仲間の力士の相撲をテレビ観戦した。 「精神的にキツかったですね。気力も薄れていくのがわかりました。だから、行動制限が解除された時、『今、できることを全力でやろう!』と気持ちを切り替えたんです」 こうして臨んだ秋場所は、初日から体が軽快に動いて、5日目、横綱・照ノ富士、6日目には大関・貴景勝を撃破し、12日目に若元春に敗れて2敗目を喫したものの、単独首位は変わらず、最終盤へ。 千秋楽は3敗で追ってくる安を本割で破って、13勝2敗で2回目の優勝を決める。 「初優勝の時は優勝争いのペースがつかめなくて、後半戦は1日中相撲のことを考えて、優勝が決まったときは、心も体も疲れ切っていたんです。でも、この時は『リラックスしていこう』と自己暗示をかけていました。千秋楽の一番は、安関が土俵上で緊張しているのがなんとなくわかって、優勝決定戦に持ち込まないよう『一発で決める!』と心に誓って取った相撲でした」