住民が市バスに乗れないほど観光客が殺到、舞妓さんを執拗に追いかける者も… 京都が苦しむ「オーバーツーリズム」の現状
伝統、文化、格式が蹂躙されている
かつて、祇園の花見小路は、「一見さんお断り」という言葉に代表されるように、観光客が軽装で堂々と歩けるような場所ではない雰囲気が濃厚に漂っていた。 今では、Tシャツに短パンの外国人観光客が、我が物顔で写真を撮りまくり、風情や格式が失われる事態に陥っている。 私が京都大学にいた頃(2010年頃)、研究室の忘年会が祇園で開かれた。祇園でアルバイトをしている後輩が一見さんお断りのお店を手配してくれたが、あの頃は、祇園らしい風情がまだ濃厚にあったことを覚えている。 祇園では繁忙期に警備員を配置したり、迷惑行為の禁止を呼びかける看板を設置するなどしているが、こうした観光地然とした対応そのものが、祇園の風情や格式を失わせているようにも思われる。 京都は観光客に支えられている町でもあるが、風情や情緒を理解しない観光客が殺到することによって、京都の持つ伝統や文化、格式が、蹂躙されている。京都の状況は、ヨーロッパのヴェネツィアやバルセロナのように、長い歴史と文化、強固な地域アイデンティティを持つ諸都市が観光客を「侵略」と呼ぶ状況と酷似している。
田中 俊徳(九州大学アジア・オセアニア研究教育機構 准教授)