F1の新規ファンが増えない根本理由 75周年を機に開かれる未来への道筋とは?
75年の進化と挑戦
本連載「開かれたF1社会とその敵」では、F1の歴史と閉鎖的な構造に焦点を当て、変化の可能性を探る。F1の成長とともに形成された独自の「F1ムラ」における利益と利他の対立、新規チームの参入の難しさ、そしてオープンな社会への道筋を検証する。F1の未来と進化に向けた具体的な可能性を示し、閉鎖的な構造からの脱却戦略を提案する。 【画像】「えぇぇぇぇ!」 これが60年前の「鈴鹿サーキット」です! 画像で見る(13枚) ※ ※ ※ 1950年に始まったF1は、2025年で75周年を迎える。人が氷河期を生き延びたのも、日本や世界に数百年の歴史を持つ企業が存在するのも、F1が今なおモータースポーツの頂点にあるのも、すべては時代の変化に対応してきたからだ。 他のスポーツも同様で、時代に応じてルールを変更してきた競技は多い。外部環境が変化するなかで、F1が今後もモータースポーツの頂点であり続けるための方策を考えてみたい。
競技経験が影響
バスケットボールの国内プロリーグであるBリーグが盛り上がっている。これは、48年ぶりに五輪への自力出場権を獲得した2023年のワールドカップの勢いが続いているからだ。さらに、日本の多くの人が学校の授業などでバスケットボールをプレーした経験があり、試合中継を見ていると自然と実感が湧いてくることも大きな要因だ。 一方、モータースポーツは、運転をすることはあっても競争することが少ないため、バスケットボールや野球、サッカーなどと比べると実感がともなわず、競技そのものを理解しにくい。これが感情移入をしにくくする要因になっている。 競技経験がないために実感がともなわず、感情移入できないスポーツは、F1に限らずブームで終わることが多い。例えば、 ・ラグビー ・プロレス がその例だ。特にプロレスは、ブームと衰退を何度も繰り返してきた。その要因について、「新日本プロレス」の親会社であるブシロードの木谷高明社長は著書『すべてのジャンルはマニアが潰す~会社を2度上場させた規格外の哲学~』(ホビージャパン)で、 「マニアの存在」 を指摘している。これは、新規参入者やファンになろうとする人を拒絶したり、見下したりすることがあるからだ。つまり、コミュニティーに「入りづらい」雰囲気があるのだ。