【ドラフト家庭の事情】楽天1位・宗山塁 父子の二人三脚《一日も欠かさず》9年間…「私がしんどくても、容赦してくれなかった」
【24年ドラフト選手の“家庭の事情”】 宗山塁 (楽天・内野手・明治大学・21歳) 【写真】明大・宗山塁 「15年ショートを任せられる」20年に1人の逸材 ◇ ◇ ◇ 宗山は、広島県三次市三良坂町で長男として生まれた。父の伸吉さん(50)は広陵高野球部出身で息子の“大先輩”。ケガで選手の道を断たれ、長男に夢を託した。「塁」という名前がそれを物語る。 宗山は三良坂小1年時に伸吉さんが監督を務める「三良坂少年野球クラブ」で野球を始めた。三良坂中時代に在籍した「高陽スカイバンズ」(軟式)でも3年間、コーチの父から指導を受けた。 伸吉さんは宗山が小学校、中学校に通った9年間3285日、一日も欠かさず自宅での練習に付き添った。 「『一日も欠かさず』というと疑われるかもしれませんが、事実なんです。私はもともと体が強くて、病院には縁がなかった。お世話になったのは整形外科くらい。旅行も1泊することはありましたが、朝に練習をやってから出発し、帰宅してからもバットを振っていました」 伸吉さんは三次市役所三良坂支所の係長。土日は三良坂少年野球クラブの監督を務める。仕事で疲れても練習に付き添い続けたのは、宗山が一度も弱音を吐かなかったからだ。 「私の方がしんどくて、どうしても疲れて休みたいときがある。でも容赦してくれなかった。あの男には休みという概念がないんだと思います。(『毎日練習すると約束できるなら少年野球クラブに入ってもいい』と)こっちが言い出したこと。約束は破れない。中学卒業まで頑張りました」 自宅前の庭に造った練習場の広さは5メートル四方の約25平方メートル。網を張って打撃ケージを造り、トレーニング用のタイヤも設置した。宗山が小学3年時、建設業の知人に頼み、1週間で造り上げた。屋根付きで雨が降っても練習ができる。打撃練習だけでなく、屋根にひもをくくりつけて上れば腕も鍛えられた。 「最初は通販でも売っているような普通のティーバッティングネットを買ったんですが、頻度が高すぎて全然話にならない。小学校1年生のときに買ったけど、1年くらいでダメになりました。毎日やっていたらすぐ壊れて、毎年買うのもガラクタが増えるばっかりになるので、練習場を造っちゃいました。費用? 内緒です(笑)」 練習場の隣にあるあずまやはバーベキュースペース。そばの田んぼの周りを走ったり、川で泳いだり。運動の環境は申し分ない。 宗山は野球を始めて自然と左打ちになった。伸吉さんは宗山が小学4年の頃、右手で箸の使い方をマスターすると、左手に替えて持つよう促した。