深夜ドラマ主演の20歳俳優の“まさかの父親”。有名CMも堂々と受け継ぐ最強のポテンシャルとは
コメディ俳優の素質
そうした古風な演出に対して、藤岡真威人はなんとも涼しい顔して前のカットから次のカットへ、フレームアウト、フレームインする。フレームに対する感性が優れている彼が演じる広野健太がコミカルなキャラクター性ということもあるが、そもそも本人が本質的にコメディ俳優の素質をもっているのか。 他の作品も確認してみる。さまざまなタイプの「“クール”で“ドジ”なイケメン男子」たちの生態をで描く『クールドジ男子』(テレビ東京、2023年)に藤岡真威人が出演している。彼が演じた二見瞬は、“強がりストイック”というタイプに分類されている。 第1話の初登場が登校場面として描かれる。バス車内でゆられる瞬がイヤホンで音楽を聴いてテンションをあげているつもりが、実はイヤホンが抜けていて音がだだもれになっている。内心焦りながら、外面はカッコつけようとする性格が分類の理由である。
画面の内と外を想像力で結びつける
内面の焦りがモノローグで描かれることで、静かに取り繕う外面とのちぐはぐなギャップが、藤岡の身体全体で表現されている。この内面ドタバタな感じをそれこそクールに演じるあたり、やっぱりコメディ俳優の素質があるんだなぁ。 すました顔でつり革につかまり、画面上をゆらりゆれる姿もすごくいい。登校場面から翻って、下校する場面でも瞬は音をだだもれにする。校舎からでてきた彼がイヤホンを耳に装着していると、まーた絶対コードがつながっていないよなと視聴者はすぐに想像できる。 つまりコードがつながっていないスマートフォン自体を画面上に写さず、つながっていなかったというオチを開示する前からコミカルな状況が伝わる。『ウイングマン』第1話でのフレームアウト、フレームインといい、藤岡真威人は、画面の内と外を(視聴者と共同する)想像力で結びつけている。
二世俳優が乱立する令和最強のポテンシャル
現在20歳。俳優デビュー作は、セガによるオリジナルキャラクター「せが四郎」動画シリーズ。どうしてこのシリーズ動画に藤岡真威人が出演したのかというと、彼の父が藤岡弘である文脈にふれないわけにはいかないだろう。 1997年、セガのCMで道着を着た藤岡弘が演じたキャラクター名が、せがた三四郎。息子俳優が新たなキャラクターとして受け継ぐ。メイキング動画を見ると、撮影現場で藤岡真威人を眼差す藤岡弘が「僕の若い頃にちょっと似てきたね、う~ん」とディープなトーンでつぶやいている。 言わずと知れた初代ライダー俳優である父をもつ藤岡真威人が、『ウイングマン』でヒーローに憧れる高校生から実際にヒーローの力を得る姿はこの父子にしかできない時代の超え方ではないか。一方で筆者は、『クールドジ男子』放送時、そうした関係性をまったく知らなかった。 客観的に見て、藤岡真威人は、二世俳優が乱立する令和最強のポテンシャルを秘めている気がする。 <文/加賀谷健> 【加賀谷健】 音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu
女子SPA!