FRB利上げ、むしろ景気の追い風だとしたら-逆張り論理に脚光
(ブルームバーグ): 米経済は毎月数十万人もの新規雇用を創出するなど、リセッション(景気後退)が迫っていると予想していた専門家を困惑させるほどの力強さを維持している。こうした中、ウォール街ではある異端の経済理論がささやかれ始めた。
過去2年にわたる急ピッチの利上げが、実のところ経済を押し上げているとしたらどうか。つまり、金利上昇にもかかわらず経済が堅調なのではなく、むしろ金利上昇のおかげで経済が好調なのではないかとの見立てだ。
学界や金融界の主流派にとってはあまりに過激であり、以前ならポピュリストであるトルコのエルドアン大統領か、現代貨幣理論(MMT)の熱心な擁護派だけが公の場で口にするような異端の理論だ。
しかし、こうした逆張り理論の支持者へと転向した人のみならず、少なくとも興味があると認めるごく一握りの人々も、経済的な証拠を無視できなくなってきていると話す。国内総生産(GDP)、失業率、企業利益といった重要指標の一部は、米利上げ開始当初と同じか、より好調であることを示している。
これは政策金利がゼロから5%超の水準に切り上がったことで、米国民が20年ぶりに債券投資や預貯金から大きな収入を得られるようになったためだと、逆張り理論の支持派は主張する。元デリバティブトレーダーで現在はニュースレター「マクロツーリスト」を執筆しているケビン・ミュア氏は「現実には、人々はもっとお金を持っている」と話す。
こうした人々は(企業も)、新たに手に入れた資金の大部分を消費に回し、需要と成長を押し上げているというのだ。
利上げ局面では通常、こうした人々の追加支出が借り入れをやめた人々の需要減少を補うには不十分なことが多い。これは米金融当局が引き起こす典型的な景気後退(これに伴うインフレ率低下)の原因となる。ミュア氏によると、経済は従来のパターンに従って「急激に減速する」と誰もが予想していた。「だが、そうではなく、おそらくもっとバランスが取れていて、やや刺激的ですらあるかもしれない」と同氏は考える。