「殺処分される不幸な猫を減らしたい」不妊去勢手術の普及図る獣医の奮闘 糞尿・鳴き声に悩む“野良猫あふれる島”で出張手術
野良猫があふれ、糞尿や夜間の鳴き声などに悩まされている兵庫県の坊勢島。島の自治会は殺処分でなく猫と共存することを選択し、出張の『不妊去勢手術』を依頼しました。「不幸な猫を減らしたい」そう願う獣医の挑戦を追いました。 【写真を見る】「おしっことかウンコとかするやろ」野良猫の“過剰繁殖”に悩む島民
「おしっことかウンコするのが困る」繁殖した野良猫に悩む島民
瀬戸内海に浮かぶ、兵庫県姫路市の坊勢島。人口約2000人の小さな島には、島民らを悩ませる「ある問題」があります。 (島民)「猫が入ってくるのよ、網戸を開けて」 (島民)「猫はおしっことかウンコするやろ、それが困る」 小さな島に野良猫があふれ、糞尿や夜間の鳴き声など被害が出ているのです。そんな島に“救世主”として現れたのが1人の獣医。不幸な猫を1匹でも減らしたい…獣医の願いがありました。
1日中休みなく手術することも…“猫専門”の不妊去勢手術を提供する獣医
兵庫県姫路市にある動物病院「スペイクリニック姫路」。運ばれてくるのは猫だけです。 (来院者)「今10か月のメス猫ですね。発情期が来てたので、妊娠を防ぐために避妊手術を受けにきてます」 「スペイ」とは「避妊や去勢手術」のこと。このクリニックは「猫」専門で不妊去勢手術に特化した病院なのです。獣医で院長の野村芽衣さん(41)は、このクリニックを2年前に開業しました。 (スペイクリニック姫路 院長・野村芽衣さん)「きょうは18匹ですね。(Q神経を使いますか?)そうですね、1匹1匹集中してやってるので」 このクリニックは不妊去勢手術に特化することで、低価格で手術を提供(オス猫:5500円 メス猫:7700円)。姫路市以外からも利用客が訪れ、予約が多いときは朝から夕方まで休むことなく手術をすることもあるといいます。
“過剰繁殖”で殺処分される猫を救うためクリニックを開業
幼い頃から動物に囲まれて育った野村さん。北海道の大学を卒業し獣医に。2013年から働いた兵庫県尼崎市の動物愛護センターでは、野良猫を保護して希望者に譲渡する活動などに奔走しました。そこで直面したのは、「過剰繁殖」の問題でした。 (野村芽衣さん)「保護と治療と譲渡をずっと繰り返す。果てしなかった」 環境省によりますと、猫は一度に平均5匹の出産を、年に2~4回行います。計算上、1匹のメス猫が1年後には20匹、2年後には80匹にも増えるのだといいます。野良猫は保護されても、譲渡を希望する人がいなければ殺処分されます。野村さんは「不幸な猫を減らしたい」という願いから不妊去勢手術を普及させようとスペイクリニックを開業したのです。 (野村芽衣さん)「飼い猫も野良猫も保護猫も全て手術しないと、この問題は根本的に解決しないんだよと。不妊手術をするのが当たり前だと思う認識に切り替えてもらったら」