「殺処分される不幸な猫を減らしたい」不妊去勢手術の普及図る獣医の奮闘 糞尿・鳴き声に悩む“野良猫あふれる島”で出張手術
殺処分ではなく“共存”を選んだ島民 出張の不妊去勢手術を依頼
今年6月5日、野村さんはある場所に向かいました。兵庫県の坊勢島です。瀬戸内海に位置し、サバやシラスなどの漁業が盛んなこの島では、漁師がネズミ対策で猫を飼う習慣がありました。しかし、放し飼いをする島民も多く、外で猫の繁殖が進み、野良猫の数が増えてしまったといいます。 (島民)「玄関にもしょっちゅう来ます。ここにもウンコしたりね。こんなん(白い人形)を置いてるのは猫が寄ってこないように」 (島民)「ネズミが増えへんからええんちゃうかなと私は思うんですが、嫌われる方もいらっしゃるので…。なんとか猫と共存できていったら」 殺処分するのでなく、共存することを選択した坊勢島の自治会は、不妊去勢手術を一部助成する姫路市の制度を利用して、野村さんに出張手術を依頼。まずはボランティアたちの手を借り、猫の捕獲をします。 (ボランティア)「生まれてもね、病気とかもあるし」 (島民)「病気がな」 (ボランティア)「何回も妊娠したら弱くなったりもするし」 島民たちの協力を得ながら、この日は猫45匹を捕獲しました。
「この機会にできる限りのことをしたい」1日で41匹の猫を手術
島にある公営の施設に「仮設の手術室」がつくられ、野村さんは手術にとりかかります。1匹目はメスの猫。手際よく手術を進めていきます。1匹あたりにかかる手術時間は、オスが約5分、メスが約20分。さらに、野村さんは不妊去勢手術のほかにも、ある治療をしていました。 (野村芽衣さん)「目の症状からすると、おそらく『ウイルス性の猫風邪症状』を発症していますので、それに対する目薬と眼軟膏、抗生物質の投与。この機会しか野良猫たちは医療を受ける機会がないので、この機会に分かったことは全部できる限りのことをさせていただきたいと思っています」 手術が終わった猫には、耳に“カット”を入れます。自然に帰った後も、「さくら耳」と言われるこの印が手術を終えた目印になるのです。この日は手術する猫の数が多いため、別の獣医も合流し、手分けして進めます。手術の合間には、犬とともに野村さんのもとへ訪れる人の姿も。 (野村芽衣さん)「心臓の音も肺の音も特に問題ありません」 動物病院がない坊勢島。犬の診察対応もしながら、あわただしく午前中が終了しました。 (野村芽衣さん)「お疲れ様です。午前は20匹(手術した)。また午後から頑張ります」 午後も野村さんのもとには次々と猫が運び込まれ、ひたすら手術を続けます。 (野村芽衣さん)「爪の根元の部分にばい菌が入って、膨らんで穴があいて膿が出ています」 健康状態の良くない猫も少なくなく、適切な処置を施します。この日の最後の手術も、集中を切らすことなく丁寧に行います。 この日、獣医2人で手術した猫は41匹。無事に終わり、野村さんも安堵の表情です。 (野村芽衣さん)「ミスは許されないので、きちんと確認させてもらいながら。事故なく終わってよかったです」
“迷惑な猫”が“愛される猫”になるように…獣医の挑戦は続く
翌朝、手術を終えた猫たちの健康状態を見回る野村さん。猫たちはこのあと、元いた場所に戻されます。 (野村芽衣さん)「現場に入れば入るほど、まだ解決できてないところがたくさんあるし、次から次へと問題があがってくるので、これからも動き続けなければいけないなという思いはありますね」 1匹でも多く、「地域の迷惑な猫」ではなく「地域から愛される猫」が増えるように、野村さんの挑戦は続きます。 (2024年6月14日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」内『特集』より)