なぜ?阪神・岩崎は村上と勝負したのか 試合後にグラウンドから動かなかった理由とは
「ヤクルト5-4阪神」(6日、神宮球場) 珍しい光景だった。6日のヤクルト戦。阪神の岩崎優投手(33)は同点の九回に登板し、2死一、二塁のフルカウントから村上に中前へサヨナラ打を浴びた。試合後、常に冷静な左腕はしばらくグラウンドから動かなかった。何かを考えながら前を見つめ続けていた理由とは-。 【写真】ぼう然と立ち尽くす岩崎 梅野は顔を合わせず肩をポンっ 歓喜に沸くヤクルトナインを横目に、何かを言いたそうな表情で前を見つめ続けた。サヨナラ負けの直後。岩崎はベースカバーに入った本塁後方で動けなかった。仲間に促されて三塁ベンチに戻ったが、表情は険しいまま。再びベンチ前に出ると柵に腰かけた。数分後、ようやく歩き出した。 普段なら試合が終わると、すぐに引き揚げて淡々と取材に応じる。勝っても負けても常に冷静。感情の起伏はほぼ感じさせないが、6日は取材に応じる声も興奮気味だった。明らかにいつもの岩崎ではなかった。 後悔なのか、チームへの申し訳なさなのか…。一夜明けて、その理由を聞いた。 「悔しかったのもありますけどね。ベースが一つ空いていたし、(カウント)3-2で走者はスタート切る。そういったことも、もちろん頭に入れた中で(村上と)勝負をしにいって。そこがどうだったのかなという時間です。打たれたからにはもっとやりようがあったのかなと思う。それを考える時間ですね」 場面は4-4の九回2死一、二塁。村上を四球で歩かせてネクストバッターズサークルで待機していた代打・川端との勝負も選択肢にはあった。それでも左腕は自分の感覚を信じた。「過去の対戦を考えて、それまで打たれていなかったんで。その確率を取ったというか。自信を持ってあの場面は勝負にいったので」。6日の試合まで村上との最近3年間は12打数1安打。10打数連続で安打を許しておらず、4番との勝負を選択した。 3球連続の外角スライダーに対して、村上はバットを振らずにカウント2-1。4球目は外角直球で空振りを奪い、続く外角低めのスライダーがボールとなってフルカウントとなった。それでも「3-2までは自分の中で思い通りに進んでいった」という。 6球目。梅野のサインに首を振り、選択したのは直球だった。「あそこで決めたかった」と振り返る真ん中低めへの144キロをファウルにされて誤算が生じた。 「ファウルにされた時点でマインドを変える必要があったかもしれない。『違う球種を選べば』とか、『コースを変えとけば良かったな』とか」 今後の対戦もあるため、配球の詳細については明かさなかったが、7球目も真っすぐを選択。これを打ち返され、試合が決まった。 一夜明けた岩崎はいつもの岩崎だった。「結果への後悔はありますよ。でも、勝負を選択した、その時の自分に対しては後悔はないです。今思えばもうちょっとできたかな、というのはありますけど」と話し、続けた。 「気持ちの整理はもうできています。疲労も全然ないですし。だから、もうちょっとぴりっとしないといけないですね」。感情のままにグラウンドに残り、胸に刻んだ反省は必ず今後に生かしてくれるはずだ。(デイリースポーツ阪神担当・西岡 誠)