「私が彼の一番になる」逮捕者続出でもホストやメン地下にハマってしまう若い女性が後を絶たない理由「ロジックが霊感商法と同じで…」
ホストと霊感商法は同じロジック
一昔前でしたら、ホストにハマるのはお金に余裕のある年配女性というイメージでした。お客とホストという関係に擬似恋愛をプロジェクションすることも、おたがいに十分承知していることが前提だったことでしょう。 ところが、まだ恋愛経験が少なく人間関係も狭いような若い人であれば、恋愛を装って積極的に働きかけてくるホストやメン地下に対して本当に恋愛感情を抱いてしまうのも無理のないことです。 一般的なアイドルなどとは異なり、直接会うこともできれば話すこともでき、お金をだせば少しの時間でもその人を独占できるとなれば、なんとかしてそうしたいと思うことでしょう。 プロジェクションの視点から見ると、ホストやメン地下へのいれこみは、お客とホスト/ファンとアイドルという関係に擬似恋愛を異投射しているといえます。 これは、霊感商法とも共通した構図であると考えられます。対象に投射される表象が、呪いからの解放か恋愛関係かといった違いはありますが、プロジェクションの働きを利用することによって継続的に大金を搾取されるという点では同じです。 霊感商法と同様に、ホストやメン地下の搾取対象となる女性は、彼女たちがそういうプロジェクションをするように、ホストやメン地下が、そして彼らを雇っている経営者や運営側が、うまく操っているのです。
擬似恋愛と競争と他者へのマウンティング
しかしここでは、擬似恋愛と課金というプロジェクションの構図を考えるのではありません。ここで考えてみたいのは、ホストやメン地下にハマる擬似恋愛だけではない側面、お客/ファンのコミュニティ内での競争と他者へのマウンティングについてです。 前述の事件にもあったように、ホストのお客には、担当のホストの店での順位を上げる、という使命が課されます。課金額が大きいほどホストの順位は上がるので、お客はそのために店で多額の注文をします。 実際にお金がなくても、借金をしたり売掛金として処理したりして工面をします。なぜそこまでして課金をするのか、もちろん自分の担当ホストをなんとかして応援したいという気持ちもありますが、お客同士の競争もあります。 今月はお客として誰が一番お金を使ったのか、はっきりとわかるようになっています。一番お金を使ったお客がホストから一番いいあつかいをされるばかりでなく、お客同士のコミュニティのなかでも他者を差し置いて一番になれるというわけです。 このような他者へのマウンティングは、通常であれば1対1でおこなわれるような恋愛の関係とは、一線を画した側面であるといえるでしょう。 メン地下にも、ファン・コミュニティでの競争があります。「推し」であるアイドルから応援してねと言われたら、自分の推しがデビューできるように応援したい、自分の推しがグループにいたなら、グループのなかでより人気のある存在にしたい、そんな動機で人気の指標となるグッズ購入などに多額の課金をします。 しかし、競争とはそれだけではありません。ライブとともにおこなわれる撮影会や一緒に出かけられるようなオプションでは、課金の大小で推しをどれだけの時間、独占できるかが決まります。 一番お金を使ったファンがコミュニティのなかでも他者から抜きんでて一番になり、推しを一番独り占めできるというわけです。このような課金やマウンティングも、そもそも1対1になるためにおこなわれているという点で、通常の恋愛関係とはかなり異なっています。 ホストやメン地下のような対象は、本来は自分の現実生活圏には存在していないという意味で、実在する人物ながらも非現実的な存在です。だからこそ、日常を離れたところでの楽しみや癒やしをもたらしてくれます。