ウクライナ東部戦線でロシアが攻勢強化、制圧面積は過去最大級
ウクライナ東部戦線でロシア軍が攻勢を強めている。米シンクタンク「戦争研究所」によると、露軍は9~10月、約1500平方キロのウクライナ領やウクライナ軍が越境攻撃するロシア領クルスク州の領土を制圧した。ロシアが2カ月で制圧した面積としては侵攻した2022年2月以降で最大だという。 さらに露軍は11月上旬以降、ドネツク州西部の要衝ポクロウシクと、10月初めに占領したウグレダル北部にある物流拠点クラホベの攻略を目指し、激戦を展開している。ウクライナのゼレンスキー大統領は8日の演説で「クラホベ方面とポクロウシク方面は今、最も困難な状況だ」と述べた。 ウクライナメディア「キーウ・インディペンデント」などによると、ウグレダル陥落後、その北西に位置するウクライナ防衛戦が局地的に相次いで崩壊。露軍はクラホベへの突破口を開いた。11日には近郊のダムが攻撃された。 また露軍は10月下旬、ドネツク州北西部の炭鉱街セリドベを掌握し、その北西約20キロの位置にあるポクロウシクへ向かって進軍。ポクロウシク近郊では激しい戦闘が起きている。東部ハリコフ州の要衝クピャンスクを巡る攻防も激しさを増している。 一方、ヒーリー英国防相は8日の英紙テレグラフ(電子版)で、露軍の10月の死傷者が4万人超に上り、ひと月あたりでは過去最多になったと述べた。猛攻によって露軍にはかなりの人的損害が出ているとみられる。 ウクライナ軍が露軍の攻勢を許した背景には、8月に開始したロシア西部クルスク州への越境攻撃があるとの指摘が出ている。クルスク州に兵力を割いたことで、東部戦線での防衛が手薄になっていたとの見方だ。これに対し、露軍はウクライナ側の意図に反して東部の戦力をクルスク州に振り分けることをせず、逆に東部での攻撃を強めたとみられる。【ベルリン五十嵐朋子】