出版界に根付く「ゴーストライター」どうして存在するのか?
佐村河内氏の件で世間を騒がせたゴーストライター問題。ライブドア元社長、堀江貴文氏の小説にも「飛び火」するなど波紋を広げています。かつては松本伊代さんが自筆エッセイの内容を記者会見で聞かれ、「まだ読んでない」と答えたこともありました。著者の代筆をするゴーストライターはどうして存在するのでしょうか。ライターにとってメリットはあるのでしょうか?
出版界ではよくあるビジネスモデル
文章を書いたのはライターなのに、その著者名にライターの名前がない――。これがゴーストライター本ですが、このビジネスモデルは出版界ではよくあることです。比率は定かではありませんが、ジャーナリストの佐々木俊尚氏はブログで『「著名な人」が出している本のたぶん9割ぐらいは、ゴーストライターが代筆した」と推測しています。 タレントや事業家、政治家といった「著名な人」は書くことが仕事ではありませんし、そのためのまとまった時間もありません。「売れている人」なら、なおさらです。また、文章スキルもそれほど高くない人もいるでしょう。しかし一定の支持層があるため、出版社にしてみればかなりの需要が期待できます。著名人としても、著書が出版できれば、大きな宣伝効果が期待できます。そして筆者はやった仕事の分だけ原稿料が入るということで、関係者は三方とも損をしないということになるのです。
ゴーストライター本はどうつくられる?
ゴーストライター本は、どのようにつくられるのでしょうか。著名人の代筆をする場合、その人物へのインタビューが主な取材となります。そもそもタレント、政治家、実業家、スポーツ選手、デザイナーなど、多くは文章を書くことが仕事ではありません。そこで文章を書くプロであるライターが本人に体験談やテーマとして取り上げたい主張を長時間インタビューし、それをまとめて代筆するという仕事が生まれるのです。 一冊の文章量は新書で約8万字、ハードカバーで10万字ほどになります。1万字で約1時間のインタビューが必要とすると、一冊のインタビュー本を作るのにおよそ10時間の取材が必要になるわけです。もちろん、著名人その人だけではなく、その関係者への取材もおこないますし、関連する資料も読みます。 こうして取材と執筆のスキルを持ったライターが、対象のタレントや周辺の人たちへ取材し、一冊の本にまとめ、著者名をタレント名のまま出すというビジネスモデルが成立するわけです。