なぜイニエスタは新型コロナ禍の“今“海外メディアにバルサ復帰説を否定したのか?
来日して3年目を迎えているサッカー界のレジェンド、MFアンドレス・イニエスタが2021シーズンまで結んでいるヴィッセル神戸との契約をまっとうする意思を明らかにした。 現地時間7日に発行されたスペイン最古のスポーツ紙『ムンド・ディポルティーボ』が、同国のラジオ局『オンダ・セロ』が電話で行ったイニエスタのインタビューを掲載。古巣のFCバルセロナへ復帰する可能性を問われたイニエスタは、ヴィッセルへの深い愛着を理由にやんわりと否定している。 「ここでフットボールを続けたいし、今回の中断の影響でプレーできる期間は延びたと思う」 イニエスタが言及した「ここ」とは、言うまでもなくヴィッセルを指す。さらに新型コロナウイルス禍で2月下旬から公式戦の中断を余儀なくされている状況が、天皇杯を制した元日まで昨シーズンを戦った代償として短くなったオフを、補ってあまりある充電期間になるとポジティブにとらえた。 イニエスタの去就をめぐっては、昨年末にアルゼンチンの名門エストゥディアンテスが獲得に乗り出すと、今年2月にはバルセロナが期限付き移籍での復帰を画策したと、ともに母国の一部メディアで報じられた。バルセロナへの復帰が問われたのは、そうした経緯とも関係しているのだろう。 下部組織を含めて22年間も所属してきたバルセロナを、2017-18シーズンをもって退団。スペイン代表としての最後の舞台となったロシアワールドカップをはさみ、2018年7月からヴィッセルでプレーする35歳のイニエスタは、自らの契約期間にも触れながらいま現在の心境をこう伝えている。 「契約は2021年まで結んでいる。早くボールと芝生の感触を味わいたい、という気持ちでいまはあふれている」
もっとも、在籍中に32個ものタイトルを獲得するなど、栄光の二文字に彩られてきたバルセロナでの日々とは異なり、ヴィッセルで待っていたのはJ1への残留争いだった。2018シーズンに5連敗、昨シーズンの前半には7連敗の泥沼にあえぎ、成績不振に伴う監督交代も3度を数えた。 それでも、昨年6月に就任したドイツ人のトルステン・フィンク監督のもとで徐々に上向きに転じ、クラブ創設以来の悲願でもあったタイトルを獲得して昨シーズンを終えるまでの、文字通りの波乱万丈に富んだ軌跡をイニエスタはこんな言葉で振り返ったことがある。 「自分はいままで(バルセロナで)勝者のプロジェクトに長く関わってきた。この(ヴィッセルでの)プロジェクトも、勝つためのものだと自分はとらえている。日本という国に着いたときから、このプロジェクトにワクワクする思いを抱きながらプレーしてきた」 タイトルを義務づけられ、世界中から代表クラスが集結したバルセロナとは異なるアプローチに誰よりもイニエスタが魅せられ、今シーズン、そして来シーズンと挑戦を続けたいと望んでいることがこの言葉からも伝わってくる。タイトルがもたらす付加価値を知らなかったヴィッセルを、常勝軍団へと生まれ変わらせる伝道師の役割にモチベーションを高ぶらせている、と表現すればいいだろうか。 もちろん、サッカーは一人では勝てない。自らと同じ時期に加入した古橋亨梧。昨春に山口蛍や西大伍、ダンクレー、セルジ・サンペール。昨夏には酒井高徳や飯倉大樹、そしてベルギー代表のトーマス・フェルマーレン。新たな仲間が加わるたびに、イニエスタが放つ輝きも増してきた。