なぜイニエスタは新型コロナ禍の“今“海外メディアにバルサ復帰説を否定したのか?
「日本に来てから新しいサッカー、新しいチーム、そして新しいチームメイトたちとの絡みのなかで、自分としても成長してきた実感がある。ACLでの戦いを含めて、今シーズンは自分のベストのバージョンというものをお見せしたいし、日本のみなさんにも自分のプレーを楽しんでほしい」 今シーズンの開幕前に開催されたキックオフカンファレンスに参加したイニエスタは、初めてタイトルを手にしたことで成長が加速される、と確信しているヴィッセルへの自信をこう表現していた。会話の場をもったカズ(横浜FC)によれば、日本でプレーする現在を笑顔で喜んでいたという。 「自分が下したチョイスは間違っていなかった、と言っていましたね」 バルセロナおよびスペイン代表でともに戦った盟友、ダビド・ビジャは鹿島アントラーズを下した天皇杯決勝をもって引退した。代わりに加わったJ1でも実績を誇るストライカー、ドウグラスがフィットしてきた矢先に、新型コロナウイルスの影響を受けてJリーグとACLが中断された。 「日本でもいろいろなものが保留になっている。家族とともに懸念を抱きながら生活しているけど、日本には平常時からマスクを着用する文化があり、スペインとは挨拶の方法も異なるし、人々は連帯感をもっている。日本全国よりも感染者数が多い(生まれ故郷の)アルバセテ県が心配だ」 こう語ったインタビューがスペインでも報じられる直前に、日本では緊急事態宣言が発出。対象地域となった7都府県のなかには、ヴィッセルがホームタウンとする神戸市を含めた兵庫県も入っている。酒井をはじめとして3人の感染者が出たトップチームも、活動再開のめどは立っていない。 自宅待機の日々が続くなかで、イニエスタはリビングで夫人のアンナさんと仲睦まじくエクササイズに励む動画を、自身のインスタグラム(andresiniesta8)で数種類にわたって公開。4人の子どもたちをまじえた動画や写真を含めて、家族とともに日本での生活を楽しんでいる様子が伝わってくる。 「共に喜び、愛するスポーツを楽しめる日が来ることを強く願っています。しかし、いまは注意を払い、責任をもった行動をするときです。体に気をつけて、注意喚起に従ってください。いまこそ、これまで以上に一致団結しましょう!」 最近になって更新されたインスタグラムのなかには、日本語とスペイン語の両方で綴られた、ファンやサポーターへ向けたこんなメッセージも含まれていた。昨秋から8勝1分けと公式戦で不敗を継続したまま中断期間に入ったヴィッセルを、さらにスケールアップさせて公式戦の再開後に披露。天皇杯に続くタイトル獲得への挑戦を加速させていく未来へ、イニエスタの視線は向けられている。 (文責・藤江直人/スポーツライター)