「本部長が隠ぺいしようとした」鹿児島県警・前生活安全部長が勾留理由開示請求で”県警の不正”訴える
鹿児島テレビ
鹿児島県警本部の生活安全部長だった男が、警察の内部資料を漏洩した疑いで逮捕された事件は5日、異例の展開を迎えました。 男の弁護士が勾留理由の開示を求める手続きが鹿児島簡易裁判所で開かれ、男がある記者に漏えいしたと明かしたのは、県警本部長をトップとする警察組織の不正でした。 5日午後、鹿児島地裁に入る1台の車。5月31日、国家公務員法違反の疑いで逮捕された鹿児島県警の前生活安全部長、本田尚志容疑者(60)を乗せていたとみられます。 逮捕からわずか5日で鹿児島簡易裁判所で開かれたのは本田容疑者の勾留理由開示請求。 これは容疑者を勾留する理由について裁判所に説明を求めるもので、公開の法廷で行われます。 鹿児島ではここ数年で数回しか行われていない、異例の手続きです。 山之口忠裁判官は本田容疑者を勾留する理由を「証拠隠滅や逃亡を疑う相当な理由があるため」としました。その後、上下黒のスーツで証言台の前に立った本田容疑者。語った犯行の動機は驚くべきものでした。 前鹿児島県警生活安全部長・本田尚志容疑者 「県警職員が行った犯罪行為を野川明輝(県警)本部長が隠ぺいしようとしたことがどうしても許せなかった」 警察によりますと本田容疑者は、生活安全部長を務めていた2024年3月までに入手した警察情報を、退職後の2024年3月下旬に鹿児島市内から第三者に郵送して、情報を漏らした疑いが持たれています。 5日の法廷ではこの警察情報が現職警察官の不祥事についてまとめた資料だと明らかにされました。 その資料には霧島署の警察官が市民にストーカー事案を行ったことや、32歳の巡査部長が捜査車両を使って盗撮行為を繰り返していたことについて書かれていて、本田容疑者は野川本部長が隠ぺいを図ったと訴えました。 本田容疑者 「野川本部長は『最後のチャンスをやろう』『泳がせよう』と言って不祥事を隠ぺいしようとする姿にがく然とし、失望しました」 野川本部長の姿勢に納得のいかなかった本田容疑者がこれらの情報を送ったのは、北海道にいるある記者だったといいます。 本田容疑者は最後にこう述べました。 本田容疑者 「不祥事を明らかにしてもらうことで、あとに残る後輩にとって良い組織になってもらいたいという気持ちでした。県警においては、間違っていることは間違っていると認め、県民の皆様に再び信頼してもらえる組織に生まれ変わってくれることを、心から願っています」 本田容疑者の弁護士は勾留の取り消しを求めていて、裁判所は早ければ6日にも判断を示すということです。 永里桂太郎弁護士 「県民の皆さまの知る権利に資するような情報を出したというものになるので、保護に値するような(守秘すべき)情報を出したという認識は本人にはない。非難されるべきは組織の方だという風に思っているので、本田さんが勾留されるのは不当だと思うし、早急に釈放されるべきだと思っている」 一方、6月5日の鹿児島県議会では一般質問が行われました。 本田容疑者の逮捕容疑の情報が、警察の不正を告発する内容だったとみられることについて、午前中の日程終了後、野川明輝県警本部長は記者の「(容疑者が流出した文書は)告発の意図があったのではないか?一言いただけないか?説明責任があるのではないか?」との質問に、無言を貫きました。 午後の一般質問では県警の不祥事に関する質問が取り上げられました。警察の元最高幹部の一人である本田容疑者が逮捕されて以降、野川本部長が直接、見解を述べるのはこれが初めてです。 県民連合・宇都恵子県議 「最高幹部が今回逮捕されている。組織トップの皆さんの意識を改革する必要があるのではないか?」 鹿児島県警本部 野川明輝本部長 「元幹部が逮捕されるという事案が明らかとなり、県民の皆さまに大変、不安とご迷惑をおかけしていることにつきまして改めてお詫び申し上げます。原点回帰ということで、県民のための警察という気持ちを改めて、初心に返って、職位一丸となって取り組んでまいります」 野川本部長はこのように述べ謝罪以上の新たな発言はありませんでした。 逮捕された容疑者が法廷で警察の不正を訴えるという異例の経過をたどる今回の事件。真相究明とあわせて警察にはより踏み込んだ説明が求められそうです。 *別記事で、勾留理由開示請求での本田容疑者の意見陳述全文(弁護士提供)を掲載します。
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