「思い描いた未来が急に見えなくなった」息子が自閉スペクトラム症と診断された倉持由香を救った夫の言葉「そして公表を決断し」
そのとき、夫が「ここで悩んで時間を止めてしまっても意味がないよ。1分1秒でも早く、湊のためになることをしていこう。一緒に湊のことを攻略していこうよ」と言ってくれたんです。そこから、前を向くことができるようになりました。 ── 具体的にはどのように? 倉持さん:まずは、住んでいる区で再度診断を受けて「通所受給者証」をもらいました。そうすると療育施設に通えるんです。今も、保育園に通いながら週に1回、療育に通っています。療育の効果を実感しているので、私たちは早く始めてよかったと思っています。湊には感覚過敏があって、大きい音が苦手なんです。以前は、小さい子の泣き声を聞くと耳を塞いだり、泣き声を止めたくて口を押さえつけようとしたりしてしまっていたのが、最近は泣いている子をハグしに行ったり、一緒に悲しそうな顔をして涙を流したりするようになりました。絵カードなどで根気よくコミュニケーションを取ってきた効果が出てきて、飲み物がほしいときはマグや冷蔵庫を指差しますし、「おでかけしよう」と言うと玄関へ歩いていって、自分でスッとベビーカーに座ります。意思疎通ができるようになった安心感からなのか、反すうで戻すことも減りましたね。
私は、湊の特性や関わり方を学ぶために「児童発達支援士」の資格を取りました。自閉スペクトラム症児の母としてテキストを読むと「湊にはこんなふうに見えているのかな」と湊の気持ちを読み解きながらスーッと内容が入ってきます。学ぶことで、私自身の気持ちの整理にもなりましたね。今年4月にはNHKの『バリバラ』という障害についてタブー視せずに取り扱う番組で、湊のことをお話しさせてもらいました。
■テレビ番組で公表すると大きな反響が ── 湊くんのことを公表することを決めたのはどうしてですか。 倉持さん:湊が自閉スペクトラム症と診断されたとき、すごく孤独を感じたんですよ。世界から取り残されてしまったみたいな。つい同じ年ごろの定型発達の子と比べてしまって、つらい気持ちになることもありました。そういうとき、私を救ってくれたのが自閉スペクトラム症当事者の方や親御さんが書かれたエッセイやSNSでした。「こういう制度がある」とか「小学校の支援級はこんな様子」などと具体的に知ることができたので、とても参考になりました。