世界ヒットする松本人志「ドキュメンタル」の狙い 吉本・岡本社長がカンヌで示した“迷いなき決断”
「黒船が来たという状況で、誰も行かなかった時に、ウチだけが野面で行ったんです。どうせなら、一番に行くっていうのがテーマにありました」 岡本社長は断定しませんでしたが、その裏には制作費の削減やむなしのテレビ局の状況が影響した可能性はあります。実際に欧米ではテレビCM収入の減少に歯止めがきかない現実をみて、グローバルプラットフォームの門を叩いた企業が相次ぎました。 ■Amazonの成功ストーリー 10月21日に開幕した見本市「MIPCOMカンヌ」の会場には、「ドキュメンタル」を象徴する松本人志の顔写真を全面に押し出した吉本興業ブースが出現していました。会場を見渡せば、ハリウッドのスタジオをはじめ、ヨーロッパの強豪や勢いが止まらない韓国など世界中のメディア企業が参加しています。国内の競り合いなど小さなものにも見え、ライバルが無限にあるように思えるなか、吉本興業のセールスチームが地道に歩を進める姿がありました。
予定していたキーノートでは岡本社長がAmazon MGMスタジオのインターナショナル・オリジナル責任者ジェームズ・ファレル氏とともに登壇し、「ドキュメンタル」成功の軌跡を改めて語っていました。 岡本社長が少々固い表情に見えたのはさておき、Amazonオリジナル番組の成功ストーリーとしての印象が強いキーノートと言えるものでした。後半パートでAmazon側のフランスとイタリアの制作責任者も登壇し、家族向けやハロウィーンなどイベント時期に合わせた作り方のヒントが披露されていたのもそれに拍車をかけました。
■展開のカギはAmazonが握っている? アメリカ版にも広がるかどうか、会場の関心はファレル氏の発言に集中し、権利を持つ吉本興業以上に展開のカギはAmazonが握っているように見えなくもありませんでした。ちなみにアメリカ版は検討されているようですが、今のところ未定です。 原点の企画力をもう少しアピールしてほしかった気がしないでもないですが、楽観的に考えても良さそうです。カンヌに参加する海外のプロデューサーの中には「ドキュメンタル」をはじめ日本のバラエティに影響を受けている人が実際にいます。イギリス在住のとあるプロデューサーから「日本のバラエティ番組がもともと好きで、インスパイアされて開発したものがある」と耳にしたこともあります。