永豊の張亨鎮（チャン・ヒョンジン）顧問（左）高麗亜鉛のチェ・ユンボム会長　［写真　各社］

非鉄金属世界１位の高麗亜鉛の経営権紛争に中国と供給網競争中の米国も注目している。ウォール・ストリート・ジャーナルは高麗亜鉛をめぐる紛争について「同社がいつか中国の手に渡りかねないという懸念が紛争を拡大している」と分析した。 同紙は２８日、「中国に対する恐れで触発された１７億ドル規模の買収戦」という記事で、「韓国で世界最大の亜鉛精練所をめぐり激しい所有権争いが起きている。紛争の中心には高麗亜鉛温山（オンサン）精練所と独占技術がある」といった。高麗亜鉛に対し「中国と独立した供給網を構築することを希望する米国においては王冠の宝石のような存在」と表現した。 メディアは紛争中である高麗亜鉛のチェ・ユンボム会長と永豊の張亨鎮（チャン・ヒョンジン）顧問、ファンド運用会社ＭＢＫパートナーズの立場を詳細に伝えた。高麗亜鉛はＭＢＫを企業ハンターと規定して買収時の核心技術の海外流出を懸念しており、ＭＢＫは経営権を確保しても株式を売却しないと約束したとの内容も伝えた。高麗亜鉛の経営権をめぐる買収戦が複雑になった背景に、「中国に技術が移転する可能性があるということだけでも世界的供給網の取引がどのように複雑になるかを見せる」と分析した。リサーチ・コンサルティング業者であるウッド・マッケンジーによると、亜鉛製錬で中国の世界シェアは４９％に達する。米国の核心鉱物安全保障パートナーシップ事務局の役割を果たすＳＡＦＥも今回の公開買い付けを敵対的買収の動きとみて「米国と同盟国が注意深くみるべき事案」と診断した。 また、高麗亜鉛がワシントンに支援要請をしていると伝えながら「米国が主要鉱物リストに載った５０個の鉱物をすべて保護するのは不可能なだけにワシントンができることは多くないだろう」とも分析した。 ◇続く誹謗戦 双方の誹謗戦は週末も続いた。ウォール・ストリート・ジャーナルの報道に対しＭＢＫは「高麗亜鉛はマタドールを超え外信記事も歪曲した。高麗亜鉛は『敵対的買収合併に対する懸念が大きくなっている』『買収時に核心鉱物の供給網かく乱』などの文章表現を使いながら報道資料を作成し報道機関に配布したが、該当の記事のどこにもこうした内容は見つからない」と主張した。 永豊は「高麗亜鉛が買収した廃棄物業者イグニオの米国本社の所在地を訪ねたところシェアオフィスだった」という内容のある韓国メディアの報道を紹介し、「５８００億ウォンの買収代金はどこに使われたのか」とチェ会長を攻撃した。これに対し高麗亜鉛は「まともに確認しないで書いた悪意ある報道。永豊などにそそのかされたと判断し、法的措置を取るだろう」と反発した。 双方の競争が過熱すると、金融監督院の李卜鉉（イ・ボクヒョン）院長が警告的な発言をした。金融監督院によると、李院長は２７日の副院長会議で「健全な経営権競争は市場の自律に任せなければならない」としながらも、「現在進行中である上場会社の公開買い付けは競争過熱とみられる側面があり、過度な競争により市場不安を引き起こし資本市場の信頼を阻害しかねないだけに鋭意注視する必要がある」と指摘した。 また、李院長は「公開買い付けと関連し根拠のないデマや噂の流布などにより投資家の誤判断や誤解を誘発する市場秩序かく乱行為など不公正取引発生の有無に対し綿密に市場監視をしなければならない。必要ならば迅速に調査に着手し摘発された違法行為に対しては非寛容の原則を適用して厳正に措置しなければならない」と指示した。金融監督院はこうした李院長の発言は特定勢力に友好的なメッセージではないと説明した。 ◇運命の時間まであと５日 来月４日までの永豊とＭＢＫの高麗亜鉛公開買い付け期限が５日先に迫る中で、高麗亜鉛が対抗して公開買い付けに出るものとみられる。ＭＢＫ側が公開買い付け価格を当初１株当たり６６万ウォンから７５万ウォンに引き上げただけに、高麗亜鉛の対抗公開買い付け価格は８０万ウォン以上になる可能性が大きい。高麗亜鉛のチェ会長が経営権を守るために必要な資金は１兆３０００億ウォン以上と推定される。 永豊とＭＢＫが高麗亜鉛の自己株式取得を禁止した仮処分申請結果も今週初めに出る見通しだ。裁判所が永豊の主張を受け入れればチェ会長は自己株式を取得できないが、申請が棄却される場合、経営権防衛手段としてチェ会長が自己株式を買い入れられるようになる。高麗亜鉛はペインキャピタルとＫＫＲなどと接触し１兆ウォン前後の資金を調達するため協議中で、救済者確保に総力を挙げているという。