繰下げ受給予定だった67歳の妻。夫を亡くしたら年金はどうなる?
繰下げ増額は遺族厚生年金の受給権発生時まで
AさんはBさん死亡以降、【図表1】の組み合わせで受給することにはなりますが、Aさんが老齢年金の繰下げ受給を考えて繰り下げ待機しているなか、遺族厚生年金の受給権が発生した場合、老齢年金についての繰り下げの増額ができるのはその時点までです。 70歳で繰下げ受給を開始する予定だったところ、67歳0ヶ月の時にBさんが死亡して遺族厚生年金の受給権が発生したとなると、67歳0ヶ月時点の繰り下げしかできません。65歳から2年(24ヶ月)繰り下げという扱いで、その繰り下げの増額率は16.8%(0.7%×24ヶ月)です。 そして、この老齢基礎年金、老齢厚生年金については、そのまま67歳0ヶ月で繰下げ受給をするか、繰り下げをせず65歳に2年さかのぼって65歳開始(増額なし)として受給するか、いずれかを選択します。 老齢基礎年金、老齢厚生年金、それぞれについて受給方法を選択したうえで、67歳以降の遺族厚生年金が差額分で支給されます。つまり、【図表2】の(1)~(4)までのパターンがあり、その選択したパターンで受給することになります。
老齢厚生年金を繰下げ受給すると、繰り下げ増額分も含めて遺族厚生年金が調整されることになっています。繰り下げで老齢厚生年金が16.8%増えても、その分遺族厚生年金が減るとなると、実際、老齢厚生年金は繰り下げ(【図表2】の(2)(4))を選択しづらく、65歳開始(【図表2】の(1)(3))を選択することが多いでしょう。
繰下げ待機中の配偶者の死亡に注意
Aさんは70歳まで繰り下げをする計画でしたが、Bさんの死亡により、それができなくなりました。繰下げ受給制度については「ねんきん定期便」などを通じて知られるようになりましたが、繰り下げを検討する場合はこのような制約・注意点があることもあらかじめ確認しておくとよいでしょう。 執筆者:井内義典 1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー
ファイナンシャルフィールド編集部