人工芝で競技力向上を 埼玉県立浦和西高校のグラウンド OBらの寄付で一新 元サッカー日本代表監督でOBの西野朗氏「この芝の下には築いてきた伝統やスピリットがある。そういうことも感じてくれたら」
母校愛あふれるOB、OGから後輩たちへ、最高の“贈り物”だ―。埼玉県さいたま市浦和区木崎の県立浦和西高校で、第1グラウンドが土から人工芝に生まれ変わり11日、完成披露式が行われた。サッカー部のOBらが主体となりプロジェクトを立ち上げ、寄付を集めて、県内県立高校初の人工芝グラウンドの完成にこぎ着けた。式に出席した元サッカー日本代表監督でOBの西野朗氏も「素晴らしい。有効に使って成果を発揮してほしい」と名門復活へ期待を込めた。人工芝グラウンドは県に寄付され、県教育局から感謝状が贈られた。 人工芝の上で紅白戦を行う選手たち【写真2枚】
サッカー部の男子OBが中心となり「人工芝化プロジェクト」を立ち上げたのは2022年1月。同年8月に一般社団法人UNSS(浦和西高スポーツサポーターズクラブ)を設立した。寄付目標額は立ち上げ時に5500万円に設定したものの、物価・人件費高騰に加え、人工芝の保全やウオーミングアップスペースの拡充などで7千万円に上げざるを得なくなった。 それでも、同窓会組織の西麗会の協力により、卒業生を中心に西高近隣の人々ら延べ1200人以上から5千万円超の篤志、企業サポーター17社から2千万円弱の協賛金が集まった。今年7月1日に着工し、9月20日に完成した。ボランティアでプロジェクトを推進した22人を中心に進捗(しんちょく)状況などを確認するリモート会議などの定例会をこれまでに約90回開催。粘り強い活動が実を結んだ。サッカー部OBでUNSS事務局の配嶋幹雄理事は「朝練に来る選手や、残ってボールを蹴る選手が増えた。芝になって良かったなぁ」と感慨深げに鮮やかな緑色を見つめた。
式典にはUNSSや企業サポーター、寄付者、来賓、在校生らが多数出席。サッカー部OBでUNSSの今井敏明代表理事のあいさつ後、寄付者を代表して、同校OBで武蔵コーポレーションの大谷義武社長が「卒業して30年、浦和西高校を出たことを誇りに思っている。微力だが素晴らしいグラウンドの造成に関われたことは大きな喜び。目いっぱい高校生活を楽しんでほしい」と言葉を贈った。最後はサッカー部が記念試合として紅白戦を行った。 サッカー部の矢沢悠人主将(3年)は「この素晴らしいグラウンドでサッカーができて幸せ」。沼田稜平副主将(3年)は「イレギュラーが減るので変なミスでの中断がなくなり練習の質が一段二段上がる」と拳を握る。女子サッカー部の魵沢(えびさわ)花凛主将(2年)は「(環境が良くなり)一日一日の練習を大切にしようという前向きな声が増えた」と笑顔を見せた。 式後に取材に応じた西野氏は、約50年前に汗を流した土のグラウンドを懐かしんだ上で、人工芝化されたことについては「安心安全でけがのリスクも減る。競技力も上がるので、サッカー部には好成績を出してもらわないと」と鼓舞。「この芝の下には築いてきた伝統やスピリットがある。そういうことも感じてくれたら」と思いを込めた。