立てこもり事件で逮捕、記者への手紙で更生誓うも再び「人質事件」 出所後の孤独 #ニュースその後
▼二度目の人質立てこもり事件 手紙のやりとりを再開した記者は…
長久保被告から「更生」の手紙が届いてから4年。埼玉県川越市のインターネットカフェで、男が女性を人質にとり立てこもる事件が起きた。 その後突入した警察により確保された男の姿を見て、記者は目を疑った。42歳になった、長久保浩二被告。 1回目の事件で9年間服役し、刑務所を出てわずか2か月後のことだった。更生を誓っていたのに、なぜ―― 記者は、当時埼玉県内の警察署に留置されていた長久保被告との手紙のやりとりを再開した。 <長久保被告からの手紙(2022年)> 『現在の自分を言葉で表わすとすれば、ずる賢い動物とでも言いましょうか…。理性から乖離した知性によって本能と自らの欲求を充足することを目論んだ怪物…なのかもしれません』 『刑務所は監視、管理されているが故に孤独を感じ難い所なのです。一方、社会は、誰も人のことを気に掛けている余裕なんてないのが現実です』
丁寧な筆跡は変わらなかったが、そこには相変わらず身勝手な言葉が並んでいた。出所後の社会で孤独を感じ、再び事件を起こしたのだという。 埼玉の事件の裁判を控えた長久保被告と面会するため、去年11月、さいたま拘置支所を訪ねた。事件当日とは違い落ち着きはらった様子の長久保被告は「更生しようみたいな真っすぐな気持ちっていうのは、正直、疑わしいんですよね」と淡々と話した。 「更生」の文字を綴った5年前、記者から手紙の返事がなかったとき、長久保被告はどう思ったのだろうか。 「またひとりになったんだなっていう感じですよね。やっぱり返ってこないと不安になるんですよ」 手紙を返さなかったことも、長久保被告が感じた“孤独”の一部になったのだろうか。話を聞いた記者は、少し後ろめたい気持ちになった。 なぜ、そしていつから“孤立”してしまったのか。記者は、山梨県にある長久保被告の故郷に向かった。
▼ゲーム好きなごく普通の少年が、なぜ立てこもり犯に…
長久保被告の実家を訪ねると、母親から話を聞くことができた。 4人兄弟の長男で、友だちや兄弟とゲームで遊ぶ普通の子どもだったという長久保被告。農業大学校に進学したが、交際相手が妊娠し結婚したのを機に、半年で中退した。2年後に離婚すると故郷を離れ、愛知県で住み込みの仕事をしていたが、その後窃盗や無銭飲食などをくり返し、29歳で服役した。その後も何度か刑務所に入り、次第に家族から孤立していった。 「あの子はもう中に入っていたほうが楽っていうのもあるのかもしれない。もうどうしようもないですよね」 母親は、そう語った。記者に宛てた手紙の中でも、刑務所ではあまり孤独を感じなかったと書いていた。