学マス「仮装狂騒曲」がすごい 小鹿なお、山本希望、紡木吏佐……声優陣が挑むラップスキルの新境地
『学園アイドルマスター』(以下、『学マス』)のゲーム内イベントとリンクする形で発表されたハロウィンソング「仮装狂騒曲」が大きな話題を呼んでいる。FAKE TYPE.が提供した、高速ラップが楽曲の大部分を占める点が非常に特徴的なエレクトロ・スウィングであるこの曲は、MVがYouTubeにて「人気急上昇の音楽」最高3位(10月8日現在)を記録。またも『学マス』が、アニソン/ゲーソンシーンにとどまらない人気曲を生み出したのだ。本稿では、そんなこの曲を巧みに歌いこなすアイドル3人による歌唱の魅力をクローズアップして解説するとともに、その他のキャラソンやアーティスト活動においてラップを歌いこなす女性声優についても言及していきたい。 【写真】『学マス』などの音楽について話す子川拓哉×渡辺量×佐藤貴文 ■三者三様の“らしさ”が感じられる「仮装狂騒曲」ラップパート まずは「仮装狂騒曲」について。今回はイベントシナリオのメインを飾り、前述したMVでも歌唱を担当している倉本千奈(CV:伊藤舞音)・篠澤広(CV:川村玲奈)・月村手毬(CV:小鹿なお)の3人バージョンについて深堀りしていく。 本作の中核となるラップパートにおいて、この3人は難易度の非常に高い楽曲であるにもかかわらず、三者三様の“らしさ”を削ぐことなく曲中に詰め込むことに成功しているのだ。コロコロ表情を変えながら愛嬌あふれるキュートさを乗せた千奈のフロウは彼女が夢見る“アイドル”としてのステージを精一杯楽しんでいる姿を想起させるものだし、逆にダウナーであることを徹底しつつサウンドに埋もれない広の声は彼女ならではの柔らかさや温かみのようなものも内包して届けられる。 その中において、やはり手毬としての小鹿の歌声は一味違う。最初のソロから、彼女のフロウはまるでこれまで何曲も歌いこなしてきたかのようなスタイリッシュさをもっており、ライムの活かし方も抜群。リスナーに対して“月村手毬”というアイドルのスキルの高さをいきなり印象付けてくる。その一方で、歌声のトーン自体は従来の手毬のソロ曲よりは若干甘めとなっているのだが、これも実はこの曲における手毬らしいアプローチ。イベントシナリオのネタバレになるため詳細な記述は避けるが、エピソードを通じてひとつ新たなものを得た先の手毬だからこそ、このトーンの選択がハマるのだ。とはいえやはり千奈や広と比べればクールめな声質には違いないため、手毬のボーカルが3人のユニゾンを、甘くなりすぎないように上手く引き締めてくれる。だからこそ、ラップ部分以外も隙なくバランス良好でさまざまなアングルから楽しませてくれる1曲として、「仮装狂騒曲」は完成をみたのだろう。 ■山本希望、紡木吏佐がキャラクターに乗せて発揮するスキル さてここからは、冒頭にも記したように、その他キャラソンやアーティスト活動の中でラップのスキルを発揮する女性声優を紹介していこう。まず最初に、その代表格として名前を挙げたいのが山本希望。演技や歌の勉強の一環としてラップに触れ始めたという彼女は、ソロアーティスト活動こそしていないものの、独自にラップ曲を多数制作。出産時にはテキストでの報告ともに、オリジナルソング「One day」を通じてその裏側を明かしてもいた。そんな彼女は、音楽原作キャラクターラッププロジェクト『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』では碧棺合歓役に起用され、「中王区」のメンバーとしても活動。独自に磨き続けてきたグルーヴ感あふれるフロウをここでも遺憾なく発揮しており、今年12月にリリースが予定されている合歓のソロ新曲も待ち遠しい。 また、キャラクターとしてのラップという観点からは、紡木吏佐の存在も忘れてはならない。『BanG Dream!』発のバンド・RAISE A SUILENのチュチュ/珠手ちゆ役として、バンド内でDJを務める彼女は、ソロでのラップパートも多数担当。ラップ未経験にもかかわらず、初挑戦となった「EXPOSE 'Burn out!!!'」から、それを感じさせないキャラクター像を反映した挑発的かつ小悪魔的な節回しを披露。最新アルバム『SAVAGE』のリード曲「V.I.P MONSTER」などの楽曲においてもさらに研ぎ澄まされたラップを聴かせ、ミクスチャーロックにさらに彩りを添え続けている。