【プロジェクトリーダー佐原伸一氏インタビュー】スズキがGSX-R1000Rでレースに帰ってくる!!! サステナブル素材と合成燃料で鈴鹿8耐に挑む!!
FIMから世界耐久選手権で協力するとオファーがあった
2022年を最後にMotoGPや全日本ロードレースからワークス活動を終了し、完全撤退したスズキだったが、その当時にMotoGPプロジェクトリーダーを務めていた佐原さんの心の内は察するに余りある。そんな佐原さんが再びレース活動のプロジェクトリーダーになるというのだから、そこへ辿り着くまでの努力には本当に頭が下がる思いだ。 画像(12枚) 現在の所属は二輪事業本部の電動パワートレイン設計グループだが、4月より本プロジェクトにかかわるための部署に異動予定だという佐原伸一さん。MotoGPで長らくプロジェクトリーダーを務めたことでお馴染みの読者も多いことだろう。ちなみにケビン・シュワンツと同い年。 普段は飄々とした雰囲気の佐原さんだが、内に秘めたレースへの情熱は並外れているに違いない。そんな思いでお話を伺った。 ──────────────────────── ──おかえりなさい!(YM・以下同) 「ただいま!(笑)」 ──どういった経緯でこのプロジェクトが始まったのですか? 「昨年の鈴鹿8耐で、弊社の鈴木俊宏社長とFIM会長が会う機会があり、エクスペリメンタルクラスというカテゴリーがあってそれにもし参戦するならFIMとしてバックアップしていくという話をいただきました。そしてスズキでレースということなら……と私に声がかかったわけです。私としては2022年にMotoGP撤退ということになった後も、どんな形であれレースに関わりたいと思っていましたので渡りに船でした。ちょっとおこがましいかもしれませんが、2輪全体が盛り上がればいいなと思っています」 ──こうしたカテゴリーで先駆者になるわけですね。 「鈴鹿8耐において一番最初にやれることになったのは、よかったと思っています。いずれはEWCなどもこういうサステナブル燃料に切り替わっていくでしょうから、ルールがそうなったときにはスズキがその1歩先にいる、というのが理想ですね。とはいえ、すでにMotoGPも合成燃料に切り替わっていくことが決まっていますから、元々はMotoGPに継続参戦していればやろうと思っていたことではあります。MotoGPよりも耐久レースでの開発になったことで条件的に厳しい部分もありますが、ハードルが上がるぶん開発も進むのかなと思っています」 ──MotoGP撤退からここまで辿り着くには相当なご苦労もあったかと想像します。 「スズキだけではできないことですからね。ヨシムラさんのマシンや色々な条件がそろって、今年の8耐に出られるということになりました。でも、撤退したから何かやらなければということではなく、先ほども申し上げましたように元々MotoGPでやろうとしていたことの中にエコ関連のこともありましたから」 ──そうした意味でも、この参戦の話は渡りに船だったわけですね。 「MotoGP撤退が決まったことで、後進への継承というものが切れてしまっていたことは気がかりでした。そこを再開できるということもありますし、ある意味では私自身の再利用でもあります(笑)。このままだと、失敗も成功も含めて私が経験してきたことがそのまま消えていってしまうという状況だった。それを後進に引き継げるというのはいいことだなと思うんです。なので、これをやるということになり、私が関わることになったというのは自然な流れだったのかなと思います」 ──カーボンニュートラル燃料で性能的なビハインドはあるのでしょうか? 「0ではありませんが、馬力のほかにドライバビリティや燃費というのも重要なファクターになってきます。耐久レースでは、燃費が悪いとピット回数が増えてしまったりするので、よりハードルは上がるんですが、使用するエルフの燃料はワールドスーパーバイクで使われるのと同じFIM公認のものだと聞いていますので、これに対応していくというのは我々にとってもいい経験になるなと」 ──全日本ロードレースで使用している合成燃料と比較すると? 「全日本のものは100%合成ですので直接的な比較はできませんが、エルフの燃料はバイオ由来のものをガソリン状に変質させたものを40%混合しているということで、セッティングはもちろん必要ですが、ガソリンエンジンにそのまま使っても特別な加工や素材が必要になるということはないです。ちなみに走行テストはヨシムラさんが主体になってやるのですが、危険なもの以外は性能向上のためにどんどんトライしていきたいと思っています」 >>>カウルは再生カーボンを使用。 >>>サンスターによる熱処理廃止鉄製ブレーキディスク+ローダストパッドを採用。かつての鋳鉄ディスクに近いフィーリングや制動力を発揮する模様だ。 >>>ヨシムラのマフラーは触媒入り。 >>>コックピットも参考までに。