「本件犯行はヘイトクライム」史上初めて検察が糾弾した 民団を「実弾で浄化」。男が差別思想を抱いた経緯
しかし、日本ではヘイトクライムとして取り締まったり、加重処罰したりする法律はない。このことは国際条約違反だと批判を受け続けている。どういうことか。 日本も加入する人種差別撤廃条約は第4条で「人種、皮膚の色、民族を異にする人の集団に対するすべての暴力行為やその扇動は、法律で処罰すべき犯罪であると宣言する」と規定し、ヘイトクライムへの処罰を要求している。 日本政府は2017年、国連への報告で「人種主義的動機は、わが国の刑事裁判手続きにおいて、動機の悪質性として適切に立証しており、裁判所で量刑上考慮されていると認識している」と回答した。 だが日本では、2016年にようやくヘイトスピーチ解消法ができたものの、禁止規定や罰則規定はなく、実効性の乏しさが指摘されている。刑法に「差別罪」もない。ヘイトクライムとして捜査、処罰する国内法はなく、その時々の裁判官や検察官らの裁量に委ねられているのが実情だ。
だからこそ、徳島地検の論告を豊福弁護士は高く評価した。 「画期的だ。少数者を含めた公益の代表として断固たる態度を示した」 徳島地検にも取材した。なぜヘイトクライムに言及したのか。田村志保次席検事は「自分の背景や出自で差別されるのは怖いこと。分かりやすく、伝わりやすいようにヘイトクライムという言葉を使った」と回答した。 徳島地裁がどのような判決を出すか。注目の判決は5月31日だった。 ▽実質的にヘイト認める 判決の日、徳島地裁には初公判と同様に大勢の傍聴人が集まった。細包寛敏裁判官は「懲役10月、保護観察付き執行猶予4年」と有罪判決の主文を言い渡した後、判決理由を次のように語った。 「脅迫文は、在日韓国人を銃撃で殺害すると容易に理解させる苛烈なものである。さらに、反日政策や浄化などといった韓国人に対する差別意識を強くうかがわせる言葉が使われており、被害者らに自分たちの出自や所属のみによって標的にされたことを理解させ、被害者は理不尽な恐怖にさいなまれている」