「本件犯行はヘイトクライム」史上初めて検察が糾弾した 民団を「実弾で浄化」。男が差別思想を抱いた経緯
「名古屋の民団や京都のウトロへの放火なども相次いでいる。殺されるのではないかという思いもよぎり、民団の事務員の安全も、団員たちの安全も大変心配になった」 恐怖は民団関係者だけではなく、民団建物の2階に住んでいた全く関係のない住民にも及んだ。 「事件の後入居者家族は退出。子どもたちの安全が心配になったとのことだった。その上、防犯カメラやインターホンをつけることとなり、出費が増えた」 「『これは政治的意見の違いによる犯行で人種差別によるヘイトクライムではない』と言うのかもしれないが、この事件はヘイトクライムだ。被告と民団には犯行前、何の接点もなかった」 姜団長はさらにたたみかけた。 「本来いろいろな人がいるはずの韓国人を十把ひとからげにし、韓国人全体と日本人全体という構図を描いて、韓国だから、韓国人だから脅迫して、攻撃したのがこの事件。人種主義の犯罪、人種差別の犯罪だ」 「被害者は民団。でも日本社会もまた被害者。このようなヘイトクライムを放置することにより、日本社会の根本が腐ってしまう。早く、正しく、厳しく対処しなければ、同じ犯罪が増加する。まず徳島で外国人、外国籍、外国系の住民を守っていくような判決にしていただきたい」
姜団長の意見陳述の後、強い態度を表明したのが、徳島地検の公判担当検察官だった。 「世間的にも問題になっている、いわゆるヘイトクライムです」 淡々とした口調だったが、中身は画期的だった。検察側は懲役10月を求刑。弁護側は執行猶予付き判決を求め、即日結審した。 ▽条約の要求に応じず国内法なし ヘイトクライムとは、差別的動機に基づく犯罪のことだ。動機に差別思想があった場合、加重処罰する法律があるアメリカのように、海外では法整備をしている国も多い。 ヘイト問題に詳しい豊福誠二弁護士(京都弁護士会)は、ヘイトクライムが他の犯罪より重く見られている理由をこう説明する。 「放置していると、最終的にジェノサイド(民族大量虐殺)につながりかねない。属性に基づく差別犯罪には厳しく対処するのが国際的な動向になっている」 日本でもヘイトクライムが相次いでいる。在日コリアンが多く暮らす京都府宇治市のウトロ地区では、2021年8月、やはり韓国人に対する差別感情を抱いた男が、住宅に放火する事件が起きた。