レッドソックスのトレード第1弾で放出選手が異例の涙の会見
実は、前日の26日、同じような状況で、優勝の望みのなくなったフィリーズからプレーオフ出場の救世主として請われる形でドジャーズにトレード移籍した2012年7月31日のことを取材していた。当時を振り返ったビクトリーノ自身が、「フィラデルフィアでは、沢山のいい出来事があったし、あの時は正直、タフだった。でも、今度、またトレードされるようなことがあれば、きっと違ったように対処できると思う。あの時より経験や年齢を重ねているし、トレードはメジャーの一部なんだから」と語っていたのだが…。 やはり、「フライング・ハワイアン」の愛称で親しまれた情熱の男の心根は、変わっていなかったということだろう。「参ったな。受け止めて、次に進まなくちゃいけないことなのに。でも、これが俺という人間なんだ」と、何度も涙をぬぐった。 ファレル監督も「フィリーズの時もフィラデルフィアに強い愛着を持っていたし、今回、ボストンのことも心から愛していた。ある意味、ユニークな男だと思う。でも、それが、ボストンに心と魂を捧げ、全てを出し尽くしてきたビクトリーノという選手なんだと思う。彼なしに2013年の優勝は成し得なかった」と、別れを惜しんだ。
レッドソックスでは2012年にベケットやクロフォードら4選手がドジャーズに移籍する“世紀のメガトレード”があり、昨年は最後の2日間で計7選手が放出される“ファイヤー・セール”が行われてきたが、ボストンで会見を行った選手はいない。カブスに移籍したレスターは、ツイッターなどのSNSソーシャルメディアでボストンのファンに惜別メッセージを送ったが、メディア対応は新天地で行われるのが普通で、試合が終わるまで球場に残って会見に臨んだのは、異例でもある。フィリーズ時代は当日試合がなく、数日後、地元紙の一面広告を出して古巣のファンに別れの挨拶を行ったビクトリーノらしい、律儀な別れの儀式だった。 試合前にトレードの一報を聞いて、ビクトリーノと話したという守護神の上原浩治投手(40)は、「(新天地に行けば)気持ちも高ぶるだろうし、彼にとっては良かったことじゃないかなと思う」としんみり言った。試合後「まだ、おるんですよ。もうはよ、行けという感じですよ」と寂しさを振り払うように笑った姿が印象的だった。 その上原自身、2年連続でトレード市場の人気選手としてメディアを賑わせている。契約はまだ1年残っており、チームの核をなす存在だが、交換要員次第で絶対残留という保証はない世界。自分の仕事に集中しようとしながらも、心底落ち着かない数日間を過ごすことになる。 トレード期限は、いよいよ、カウントダウンがスタート。23日にはブルワーズからラミレス三塁手がパイレーツへ、26日にはロイヤルズが先発右腕クエトをレッズから獲得など、市場は活発に動き出した。