競輪レーサーと野生のクマ、どちらが速い? 選手のリアルなクマ遭遇から考えるサバイバル
キャンプ場でクマ出没情報、競輪選手に忍び寄る危機!?
愛知県を代表するグランプリレーサーの金子貴志選手(48歳・愛知=75期)も、かつてクマの出没情報で気になる経験をしました。 金子選手はキャンプ愛好家。レースでは毎日緊張しますが、大自然のなかでリラックスでき、心身がリフレッシュされます。次のレースに向けたトレーニングに集中するためにも、大切な時間なのです。 しかし、自然には危険も潜んでいます。同じ中部地区の神田龍選手(34歳・三重=105期)と一緒に、富山県のキャンプ場を訪れたときのことです。 「“熊が出没した”というニュースが報道されたりしますが、このキャンプ場周辺でも冬眠前の熊の目撃情報があるそうです。(中略)神田選手は夕暮れまで時間を忘れているかのように、薪割りに夢中になっていました。熊のことは気になっていたようですが(笑)」(金子貴志コラム「不屈の男・金子貴志の奮闘記」netkeirin2021年12月27日) 金子選手たちはキャンプ場をきれいに利用し、無事にこの日を終えました。自然のなかで伸び伸びとした時間を過ごすためには、クマなどの野生動物に対する注意も欠かせません。 キャンプ場でクマに遭遇しないためには、どのような点に注意したらよいのでしょうか。たとえば、東京都環境局のウェブサイトでは「被害を防ぐために」として、以下のような点を挙げています。 ・テントに食べ物のにおいが残るため、テント内での食事は避ける ・食べ物は密閉容器に入れ、可能であればテント外(車など)に保管 ・使った食器類は、置きっぱなしにせず洗って片付ける ・生ごみは密閉袋に入れて持ち帰るか、クマ対策をしたゴミ箱に捨てる また、お菓子ひとつでもテント内に置かないことや、調理した服で眠らず、寝る前に清潔な衣類に着替えることなども、安全なキャンプを楽しむために大切のようです。
競輪選手ならクマから逃げ切れるのか?
競輪選手は競輪場で自転車を使い、時速60~70キロで走ります。一方ヒグマは、自然環境や野生動物を保護する知床財団のウェブサイトによれば、時速60キロで走るとあります。 単純に数字だけ比較すれば競輪選手の方が速そうですが、クマと遭遇するのは競輪場ではなく、山道などです。道のコンディションや転倒のリスクなどを考慮すると、すべての競輪選手が大森選手のように逃げ切れる保証はありません。 実際に出会ったときの対処法については、環境省自然環境局の『クマ類の出没対応マニュアル-改定版-』などが参考になります。遭遇するのは人の生活圏など、山林に限りません。 ■遠くにクマがいる場合 クマが遠くにいる場合は、冷静に静かにその場を離れるのが基本です。ほとんどの場合、クマは人の気配を感じると逃げたり隠れたりしますが、クマが気づいていない場合は、物音などで存在を知らせ、慎重にその場を離れましょう。急な大声や動きはクマを驚かせるため避けます。 ■近くにクマがいる場合 クマが近づいてくる場合、威嚇的な行動を見せることがあります。この場合も、冷静にクマとの距離を取り、クマが立ち去るのを待つのが賢明です。背を向けて逃げると追いかけられる可能性が高まるので、ゆっくり後ろ向きに退きましょう。 ■至近距離で突発的に遭遇した場合 クマが攻撃するリスクは高まります。攻撃を回避する完全な対処方法はありません。攻撃された場合、顔や頭を両腕で覆い、直ちにうつ伏せになるなどで、致命的なダメージを最小限にとどめることが重要です。ツキノワグマの場合、一度攻撃した後、すぐに逃げることが多いとされています。クマ撃退スプレーを持っている場合は、攻撃を回避できる可能性が高まります。
クマに捕まって実際に攻撃されたら、反撃の手段はないのでしょうか? 危機管理のスペシャリストらによれば、「実際に襲われたら、どんな手を使ってもいいので反撃しましょう。目や鼻先を狙うのが効果的です」(ジョシュア・ペイビン、デビット・ボーゲニクト著『もしもワニに襲われたら』文響社、2023年)とあり、全く希望がないわけではなさそうです。 クマに遭遇したときの対策を考えることは、練習中の競輪選手だけでなく一般市民にとっても重要です。最も重要なのは、クマと出会わないこと。適切な対策を講じることで、クマとの共存を目指したいものです。